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こんにちは、ももやまです。
今回は全微分についてです。
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1.全微分とは
まず、全微分とはどんなものなのかを簡単に説明したいと思います。
2変数関数 \( z = f(x,y) \) の \( x \) の変化量 \( dx \) 、\( y \) の変化量 \( dy \) がそれぞれ微小であれば \( z \) の変化量を \( dx \) と \( dy \) で近似してあげることができます。具体的に公式化すると、
2変数関数 \( z = f(x,y) \) の \( z \) の変化量 \( dz \) は、\( x \) の変化量を \( dx \)、\( y \) の変化量 \( dy \) を用いて以下のように表せる。\[ dz = f_{x} (x,y) \ dx + f_{y} (x,y) \ dy \]
という式で表すことができます。
例題で1問全微分をしてみましょう。
例題1
\[z = f(x,y) = x^2 y^3 \] の全微分を求めなさい。
解説1
\[ f_x = 2x y^3 , \ \ \ f_y = 3 x^2 y^2 \]なので、全微分は\[ dz =2x y^3 \ dx + 3 x^2 y^2 \ dy \]となる。
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2.全微分可能性を調べる
2変数関数 \( f(x,y) \) は常に微分できるとは限りません。
2変数関数 \( f(x,y) \) が点 \( (a,b) \) において\[
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{f(a+h,b+k) - f(a,b) - Ah - Bk}{\sqrt{h^2 + k^2}} = 0 \]となるとき、全微分が可能といえる。
また、全微分が可能なとき、\( f(x,y) \) は \( (a,b) \) において連続かつ偏微分が可能で、さらに\[ A = f_x (a,b), \ \ \ B = f_y (a,b) \]を満たす。
ちょっと難しい式ですね。
実際に全微分可能性を調べるときは、下のようなやり方をします。
Step 1. 偏微分の定義に従って偏微分を計算する。
\[ f_x (a,b) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h,b) - f(a,b)}{h} \]\[ f_y (a,b) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a,b+h) - f(a,b)}{h} \]
を計算し、\( f_x (a,b) \) と \( f_y (a,b) \) を求める。
Step 2. 全微分ができると仮定する(背理法)。
すると、\( A = f_x (a,b) \), \( B = f_y (a,b) \) を満たすので実際に\[
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{f(a+h,b+k) - f(0,0) - Ah - Bk}{\sqrt{h^2 + k^2}} = 0 \]に代入。
Step 3. 確認
極限が0:定義が成立するので全微分が可能と示せる
極限が0以外:背理法により全微分が不可能と示せる
実際に例題を解きながら学んでいきましょう。
例題2
つぎの関数\[ f(x,y) = \left\{ \begin{array}{l} \ \ \frac{2 x^2 y^2}{x^2 + y^2} \ \ & (x,y) \not = (0,0) \\ \ \ \ \ \ \ 0 & (x,y) = (0,0) \end{array}\right.\]が全微分可能かどうか調べなさい。
解説2
上の全微分可能性の公式を使います。
まずは、定義にそって偏微分を行います。\[ f_x(0,0) = \lim_{h \to 0} \frac{f(h,0) - f(0,0)}{h} = \lim_{h \to 0} \frac{0}{h} = 0 \]\[ f_y(0,0) = \lim_{k \to 0} \frac{f(0,k) - f(0,0)}{k} = \lim_{k \to 0} \frac{0}{k} = 0 \]より、\( f_x (0,0) = 0, \ \ f_y =(0,0) = 0 \) となります。
つぎに、全微分が可能と仮定します。すると、\( A = 0 \), \( B = 0 \) となります。なので、\[ \begin{align*} &
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{f(h,k) - f(0,0)}{\sqrt{h^2 + k^2}}
\\ = & \lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{2 h^2 k^2}{h^2 + k^2} \cdot \frac{1}{\sqrt{h^2 + k^2}}
\\ = & \lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{2 h^2 k^2}{\left(h^2 + k^2 \right)^{\frac{3}{2}}}
\end{align*} \]を満たせばよい。
あとは2変数の極限を計算するだけ。
\( h = r \cos \theta \), \( k = r \sin \theta \) とする。
すると、\[ \begin{align*} &
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{2 h^2 k^2}{\left(h^2 + k^2 \right)^{\frac{3}{2}}}
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{2 r^4 \cos^2 x \sin^2 x}{\left(r^2 \cos^2 + r^2 \sin^2 \right)^{\frac{3}{2}}}
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{2 r^4 \cos^2 x \sin^2 x}{ r^3 \left(\cos^2 + r^2 \sin^2 \right)^{\frac{3}{2}}}
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{2 r^4 \cdot \frac{1}{4} \sin^2 2x}{r^3}
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{1}{2} r \sin^2 2x
\end{align*} \]となる。
また、\( 0 \leqq \left| \sin^2 2x \right| \leqq 1 \) となる。
よって、極限は0に収束する。よって、 \[ \lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{f(h,k) - f(0,0)}{\sqrt{h^2 + k^2}} = 0 \]が示せた。
よって、定義より全微分は存在する。
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3.全微分の応用
全微分を応用して、つぎのような問題を解くことができます。
例題3
次の問いに答えなさい。
(1) \( z = \sqrt{x^2 + y^2} \) の全微分を求めなさい。
(2) (1) を用いて、\( \sqrt{ (3.05)^2 + (3.98)^2} \) の値を小数第3位まで求めなさい。
解説3
(1) \( z = f(x,y) \) とする。
\[ f_x = \frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}, \ \ \ f_y = \frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}} \]なので全微分は、\[
dz = \frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}} \ dx + \frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}} \ dy \]となる。
(2) \( x = 3 \) の微小な増加量 \( dx = 0.05 \)、\( y = 4 \) の微小な増加量 \( dy = -0.02 \) のときの微小な増加量 \( dz \) を全微分で求める。\[\begin{align*}
dz & = \frac{3}{\sqrt{3^2+4^2}} \cdot 0.05 + \frac{4}{\sqrt{3^2+4^2}} \cdot (-0.02)
\\ & = 0.6 \times 0.05 + 0.8 \times (-0.02)
\\ & = 0.03 - 0.016 = 0.014
\end{align*} \]となる。また、\[z = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5 \]なので、\[ \sqrt{ (3.05)^2 + (3.98)^2} = z + dz = 5.014 \]と求めることができる。
(ちなみに実施に関数電卓とかで計算すると5.01427…になるので全微分を使っても結構正確に計算をすることができますね!)
4.練習問題
では、練習をしましょう。
練習1
つぎの(1)~(3)の全微分を求めなさい。
(1) \[z = \sin xy \]
(2) \[ z = \frac{x}{y} \]
(3) \[ z = \log (4x + 3y) \]
練習2
つぎの関数\[ f(x,y) = \left\{ \begin{array}{l} \ \ \frac{|x| y}{\sqrt{x^2 + y^2}} \ \ & (x,y) \not = (0,0) \\ \ \ \ \ \ \ 0 & (x,y) = (0,0) \end{array}\right.\]が全微分可能かどうか調べなさい。
練習3
底の半径が \( x \), 高さが \( y \) である直円錐の体積は \[ y = \frac{1}{3} \pi x^2 y \]で与えられる。
これについて次の問いに答えなさい。
(1) 半径が \( x \) 、高さが \( y \) それぞれ \( dx \), \( dy \) ずつ増加したときの体積 \( V \) の増加量 \( dV \) を求めなさい。
(2) 半径 \( x \) が3%、高さ \( y \) が1%増加したときの体積の増加量は何%ですか? 整数で答えなさい(割り切れなければ小数第1位四捨五入)。
5.練習問題の解答
解答1
いずれも \( z = f(x,y) \) とおく。
(1) \[ f_x = y \cos xy, \ \ \ f_y = x \cos xy \]となる。よって、全微分は\[ dz = y \cos xy \ dx + x \cos xy \ dy \]となる。
(2) \[ f_x = \frac{1}{y}, \ \ \ f_y = - \frac{x}{y^2} \]となる。よって、全微分は\[ dz = \frac{1}{y} \ dx - \frac{x}{y^2} \ dy \]となる。
(3) \[ f_x = \frac{4}{4x+3y}, \ \ \ f_y = \frac{3}{4x+3y} \]となる。よって、全微分は\[ dz = \frac{4}{4x+3y} \ dx + \frac{3}{4x+3y} \ dy \]となる。
解答2
原点における偏微分係数をまずは求める。
\[ f_x(0,0) = \lim_{h \to 0} \frac{f(h,0) - f(0,0)}{h} = \lim_{h \to 0} \frac{0}{h} = 0 \]\[ f_y(0,0) = \lim_{k \to 0} \frac{f(0,k) - f(0,0)}{k} = \lim_{k \to 0} \frac{0}{k} = 0 \]より、\( f_x (0,0) = 0, \ \ f_y =(0,0) = 0 \) となる。
つぎに、全微分が可能と仮定する。すると、\( A = 0 \), \( B = 0 \) となります。なので、\[ \begin{align*} &
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{f(h,k) - f(0,0)}{\sqrt{h^2 + k^2}}
\\ = & \lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{|h| k}{\sqrt{h^2 + k^2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{h^2 + k^2}}
\\ = & \lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{|h| k}{h^2 + k^2}
\end{align*} \]を満たせばよい。
\( h = r \cos \theta \), \( k = r \sin \theta \) とする。
すると、\[ \begin{align*} &
\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{|h| k}{h^2 + k^2}
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{|r \sin \theta| r \cos \theta}{r^2 \left( \cos^2 + \sin^2 \right) }
\\ = & \lim_{r \to 0} \frac{|r| r | \sin \theta| \cos \theta}{r^2}
\end{align*} \]となる。
\( r \gt 0 \) のとき、\( |r| = r \) となるので、\[\begin{align*} &
\lim_{r \to +0} \frac{r | r | \left| \sin \theta \right| \cos \theta}{r^2}
\\ = & \lim_{r \to +0} \frac{r^2 | \sin \theta| \cos \theta}{r^2}
\\ = & \lim_{r \to +0} | \sin \theta| \cos \theta
\end{align*} \]となる。
この極限は \( \theta = 0 \) のとき0、\( \theta = \pi / 4 \) のとき \( 1/2 \) となり、\( \theta \) の値によって極限値は異なる。
当然、\[\lim_{(h,k) \to (0,0)} \frac{|h| k}{h^2 + k^2} \] の極限値も存在しない。
なので、仮定は矛盾する。
よって全微分は不可能である。
解答3
(1)
まずは、\( V \) の全微分を求めます。
\[ f_x = \frac{2}{3} \pi xy, \ \ \ f_y = \frac{1}{3} \pi x^2 \]となる。よって、全微分は\[ dz = \frac{2}{3} \pi xy \ dx + \frac{1}{3} \pi x^2 \ dy \]となる。
(2)
もとの半径、高さを \( x = 1 \) , \( y = 1 \) としたときの体積を出します(元の式に代入するだけ)。すると、\[ \frac{1}{3} \pi \]と出せます。
つぎに、増加量 \( dx = 0.03 \) (3%分)、\( dy = 0.01 \) (1%分)としたときの 増加量 \( dz \) の値を出します。\[\begin{align*}
dz & = \frac{2}{3} \pi \cdot \frac{3}{100} + \frac{1}{3} \pi x^2 \cdot \frac{1}{100}
\\ & = \frac{7}{300} \pi
\end{align*} \]と求めることができます(これは増加分の体積であって割合ではないことに注意)。
あとは(増加分の体積)を(元の体積)で割って100を掛けたら増加量(パーセント)が出せます。\[ \frac{ \frac{7}{300} \pi }{ \frac{100}{300} \pi } \cdot 100 = 7 \]となるので答えは7%となります。
5.さいごに
今回は、全微分の方法、全微分可能性の判定法、そして全微分の応用として2変数の微小な変動から2変数関数の微小な変動量を求める方法についてまとめました。
全微分は、計算自体は偏微分の計算をマスターしていればそこまで難しくないですが、全微分の可能性の判定、全微分の応用となると難易度が上がるので注意してください。
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