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こんにちは、ももやまです。
前回のF分布のいろは①では、「F分布とはどんなものなのか」というところから、「F分布を用いて母分散の比率の区間推定」について勉強しました。
今回のF分布のいろは②では、「F分布を使って、2つの標本の母分散が等しいかどうか」を仮説検定する等分散性の検定の方法について学習していきましょう。
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1. F分布のおさらい
まずは、F分布について簡単におさらいしておきましょう。
2つの各標本データの変数は、以下の表のように定義されているとする。
標本1 | 標本2 | |
---|---|---|
カイ2乗値 | ||
標本サイズ (既知) | ||
自由度 | ||
不偏分散 | ||
母分散 |
(1) F分布の定義
※ 上の式で計算される
(2) F統計量と不偏分散、母分散の関係
※1
※2 カイ2乗値
※
(3) 下側確率をF分布表から読み取る方法
下側確率
Step1. 上側確率
Step2. 読み取った値の逆数(1/F値)を取る。
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2. まずは例題で確認!(等分散性検定の流れ)
実際に、等分散性の検定の流れを例題で確認しましょう。
ある大学では、1年生は1類、2類、3類の3つのクラスに分かれており、桃山先生は1類の1年生の講義「解析学1」の担当をしている。
桃山先生が受け持った1類の「解析学1」の成績分布について、以下のことがわかっている。
2024年度 | 2023年度 | |
---|---|---|
履修人数 | 61 | 41 |
平均点 | 72 | 75 |
不偏分散 | 100 | 50 |
ある日、桃山先生は「解析学1」の点数のばらつき具合について、2023年度と2024年度の変化度合いを調べようとしたが、桃山先生が担当していない2類、3類の「解析学1」の成績データは残っていない。そこで、桃山先生は、つぎの仮説検定を行うことにした。
2024年度の解析学の点数の母分散
この仮説検定を行うために、(1)〜(5)の問いに答えなさい。
(1) 帰無仮説と対立仮説を述べなさい。
(2) この検定に必要な分布を答えなさい。自由度がある分布であれば、自由度も述べること。
(3) 与えられた「解析学1」の成績分布から、この検定で使う統計量を計算しなさい。
(4) 有意水準(危険率)5%で仮説検定を行う。この検定で使う臨界値をすべて求めなさい。(小数の形で表していなくてもよい。)
(5) 有意水準5%で結論を述べなさい。
※ 臨界値:仮説の採択/棄却が変わる境界値のこと。片側検定であれば1つ、両側検定であれば2つある。
※ 必要であれば、こちらからF分布表をダウンロードできます。
解説.
問題を解く前に、与えられたデータから変数をつぎのようにおきます。
※ 母分散
2024年度 (標本1) | 2023年度 (標本2) | |
---|---|---|
履修人数 | ||
不偏分散 | ||
母分散 |
(1) 帰無仮説と対立仮説
等分散性の検定では、帰無仮説で2標本の母分散が等しいことを仮定し、対立仮説で帰無仮説の否定、つまり2標本の母分散が等しくないことを検定します。
帰無仮説
2024年度の解析学の点数の母分散
対立仮説
2024年度の解析学の点数の母分散
(2) 必要な分布と自由度の確認
等分散性の検定では、F分布を使用します。また、その自由度は2つの標本の組み合わせによって決まります。
今回は、2024年度のデータ(標本1)に対する自由度を
2024年度 (標本1) | 2023年度 (標本2) | |
---|---|---|
履修人数 | ||
自由度 | ||
不偏分散 | ||
母分散 |
すると、自由度の組み合わせは
(3) F統計量の計算
今回の検定で使うF統計量を計算していきます。
まず、F値は
ここで、帰無仮説で
そのため、F統計量は
あとは、
(4) F分布表の読み取り:臨界値(採択/棄却の境界値)の確認
つぎに、有意水準5%に対応する
等分散性の仮説検定では、対立仮説が

そのため、等分散性の仮説検定は必ず両側検定で実施します。
ここで、
… 母分散の比率が小さすぎる場合の臨界値(下側2.5%点、上側97.5%点)
→ F統計量が、この値よりも小さい場合は仮説が棄却される … 母分散の比率が大きすぎる場合の臨界値(上側2.5%点)
→ F統計量が、この値よりも大きい場合は仮説が棄却される

[i] 母分散の比率が大きすぎる場合の臨界値
自由度は

なので、
[ii] 母分散の比率が小さすぎる場合の臨界値
なので、次の手順で上側2.5%点
- 上側確率
、自由度 のときのF値を表から読み取る。 - 読み取った値の逆数(1/F値)を取る。
まず、自由度

この値 (1.744) の逆数が
※ 3章で詳しく説明しますが、"[ii] 母分散の比率が小さすぎる場合の臨界値" のステップは省略可能です。
(5) 採択/棄却の判定
あとは、(3)計算したF統計量
【結論の出し方】
- F統計量
が2つの臨界値 , におさまっている場合、つまり
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとは言えない - F統計量
が2つの臨界値 , におさまっていない場合、つまり もしくは
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないと言える

今回は、

補足.等分散性の仮説検定の結果と母比率の信頼区間の関係
等分散性の検定では、2標本の母分散
ここで、
そのため、等分散性の仮説検定の結果と母比率の信頼区間には、以下のような関係があると言えます。
- 有意水準
%にて仮説が採択された
→ 信頼度 %での母分散の比の信頼区間に 1 が含まれる - 有意水準
にて仮説が棄却された
→ 信頼度 %での母分散の比の信頼区間に 1 が含まれない
※ 実際に、今回の例題で使用した等分散性の検定の問題でも、上の関係は成り立っています。
- 結論 → 棄却
- 母分散の比率の信頼区間:1.11~3.49(信頼区間に1が含まれない)
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3. 等分散検定の省略テクニック紹介
ここで、等分散性の計算を少し早くするテクニックを紹介しましょう。
標本1 | 標本2 | |
---|---|---|
標本サイズ | ||
自由度 | ||
不偏分散 | ||
母分散 |
ポイントは、2つの標本のデータのうち、より不偏分散が大きい方を
ここで下側確率(例: 2.5%、5%、10%、20%など)に対する臨界値
そのため、
よって、仮説検定の結果(採択/棄却)を判定する際には、

のとき
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとは言えない のとき
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないといえる
具体的には、F統計量
のとき
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとは言えない のとき
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないといえる
※ 下側確率に対する臨界点
ただし、どうしても計算したい場合は
4. 等分散性の検定手順まとめ
2標本の母分散が等しいかどうかを、標本サイズ
事前準備.(実施するとStep4, Step5の一部計算、処理を省略できる)
標本1の不偏分散
標本1 | 標本2 | |
---|---|---|
標本サイズ (既知) | ||
自由度 | ||
不偏分散 (既知) | ||
母分散 (未知) |
Step1. 帰無仮説と対立仮説を立てる
帰無仮説
対立仮説
Step2. 必要な分布、自由度を確認する
使う分布: F分布
自由度:
Step3. F統計量の計算
帰無仮説にて、
※ 事前準備で
Step4. F分布表の読み取り:臨界値(採択/棄却の境界値)の確認
対立仮説が、
… 下側 %点 [上側 %点] … 上側 %点
※ 事前準備済の場合は

[i]
[ii]
※ 事前準備済の場合は計算不要[2]事前準備で
- 上側確率
、自由度 のときのF値を表から読み取る。 - 読み取った値の逆数(1/F値)を取る。
※ 事前準備をしたが、どうしても
Step5. F分布表の読み取り:臨界値(採択/棄却の境界値)の確認
★事前準備済の場合(
のとき
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとは言えない のとき
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないといえる

※
★事前準備をしていない場合
のとき
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとはいえない もしくは のとき
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないといえる

5. 練習問題で確認
最後に、今回習った内容が理解できているかを練習問題で確認しましょう。
小問はつけていません。
桃山食堂では、ご飯を自動で一定量盛り付ける機械を導入している。この食堂では、最近、新型の機械を導入し、旧型の機械と比較して盛り付けられるご飯の重さのばらつき具合がどのように変わったかを調査した。
実際に、新しい機械、古い機械からランダムにご飯を盛り付けて、その重さを測定したところ、以下のデータを得ることができた。(ただしお椀の重さは入っていない)
新型 | 旧型 | |
---|---|---|
サンプル数 | 21 | 16 |
平均 [g] | 120 | 118 |
不偏分散 [g2] | 20 | 50 |
問題.旧型の機械で盛り付けられるご飯の重さと、新型の機械で盛り付けられるご飯の重さの母分散は、同じとみなしてよいか? 有意水準(危険率)5%で推定しなさい。
※ 必要であれば、こちらからF分布表をダウンロードできます。
6. 練習問題の答え
問題を解く前に、与えられたデータから変数をつぎのようにおきます。
※
旧型 (標本1) | 新型 (標本2) | |
---|---|---|
サンプル数 | ||
自由度 | ||
不偏分散 [g2] | ||
母分散 [g2] |
Step1. 帰無仮説、対立仮説を立てる
帰無仮説
旧型の機械で盛り付けられるご飯の重さの母分散
対立仮説
旧型の機械で盛り付けられるご飯の重さの母分散
Step2. 使用する分布、自由度の確認
使用する分布: F分布
自由度:
Step3. F統計量の計算
帰無仮説にて、
Step4. F分布表の読み取り:臨界値(採択/棄却の境界値)の確認
有意水準5%に対応する
等分散性の仮説検定では、母分散の比率が小さすぎる場合、母分散の比率が大きすぎる場合の両方を考慮する必要があります。よって、両側検定を行います。
まず、
… 母分散の比率が小さすぎる場合の臨界値(上側97.5%点、下側2.5%点)
→ F統計量が、この値よりも小さい場合は仮説が棄却される … 母分散の比率が大きすぎる場合の臨界値(上側2.5%点)
→ F統計量が、この値よりも大きい場合は仮説が棄却される

ここで、事前に
なので、
[i] 母分散の比率が大きすぎる場合の臨界値
自由度は

なので、
Step5. F分布表の読み取り:臨界値(採択/棄却の境界値)の確認
あとは、
のとき
→ 仮説は採択:母分散が等しくないとはいえない のとき
→ 仮説は棄却:母分散が等しくないといえる
今回は、
よって仮説は採択され、「旧型の機械で盛り付けられるご飯の重さの母分散
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