スポンサードリンク
こんにちは、ももやまです。
今回は、物価の変動度合いを表す3つの指数
- ラスパイレス指数
- パーシェ指数
- フィッシャー指数
がどのようなものなのか、またどのように計算できるかを、実際に見ていきましょう。
スポンサードリンク
1. ラスパイレス指数
ラスパイレス指数は、基準時点(基準年、基準月など)の数量をベースとして、基準地点に対する比較時点(比較年、比較月など)の物価の変化度合いを、比率(基準値: 100)で表したものです。
具体的には、ラスパイレス指数 \( P_L \) は次のように定義されます。
ラスパイレスは、次の式により計算できる。
※ 比較時数量は計算に使わないのがポイント!!
上の式を文字式で書くと、次の通りとなる。
\[
P_L = \frac{ \sum^{n}_{k = 1} \textcolor{orange}{ p_{1k} } \textcolor{deepskyblue}{ q_{0k} } }{ \sum^{n}_{k = 1} \textcolor{green}{p_{0k}} \textcolor{deepskyblue}{ q_{0k} } } \times 100
\]
--- 文字式内の記号の意味 ---
- 基準時のパラメータ
- \( \textcolor{green}{p_{0k} } \) … \( k \) 番目の項目における基準時の価格
- \( \textcolor{deepskyblue}{q_{0k}} \) … \( k \) 番目の項目における基準時の数量
- 比較時のパラメータ
- \( \textcolor{orange}{ p_{1k} } \) … \( k \) 番目の項目における比較時の価格
- \( \textcolor{magenta}{ q_{1k} } \) … \( k \) 番目の項目における比較時の数量
- \( n \) … 項目の数
実際のラスパイレス指数の計算例を、例題で確認しましょう。
桃山研究室では、毎年大学の文化祭でハンバーガーショップの模擬店を開いている。2023年を基準とした2024年の物価の変動具合を計算するために、模擬店の売上データを確認したところ、以下の表の通りであることがわかった。
このデータをもとに、ラスパイレス指数 \( P_L \) を計算しなさい。結果は小数第1位まで示すこと。
価格 (ハンバーガー) | 数量 (ハンバーガー) | 価格 (チーズバーガー) | 数量 (チーズバーガー) | |
---|---|---|---|---|
基準年 (2023年) | 200 | 100 | 250 | 80 |
比較年 (2024年) | 180 | 50 | 200 | 120 |
解説1
ラスパイレス指数の公式に、与えられたデータの値を与えて計算しましょう。
価格 (ハンバーガー) | 数量 (ハンバーガー) | 価格 (チーズバーガー) | 数量 (チーズバーガー) | |
---|---|---|---|---|
基準年 (2023年) | 200 | 100 | 250 | 80 |
比較年 (2024年) | 180 | 50 | 200 | 120 |
実際に計算すると、ラスパイレス指数 \( P_L \) は次のように計算できます。
\[\begin{align*}
P_L & = \frac{ \textcolor{orange}{180} \times \textcolor{deepskyblue}{100} + \textcolor{orange}{200} \times \textcolor{deepskyblue}{80} }{ \textcolor{green}{200} \times \textcolor{deepskyblue}{100} + \textcolor{green}{250} \times \textcolor{deepskyblue}{80} } \times 100
\\ & = \frac{ 18000 + 16000 }{ 20000 + 20000 } \times 100
\\ & = \frac{ 34000 }{ 40000 } \times 100
\\ & = 0.85 \times 100
\\ & = 85
\end{align*}\]
よって、ラスパイレス指数は 85.0 と求められます。
ラスパイレス指数の注意点.
ラスパイレス指数は、基準時点と比較時点の数量のうち、基準時点の数量のみを計算に使用します。そのため、比較時点の数量はラスパイレス指数に一切影響しません。
このため、消費者が価格上昇に対して購入量を減らすという現実の行動を反映せず、価格上昇を過大評価する傾向がある点に注意が必要です[1] … Continue reading。
スポンサードリンク
2. パーシェ指数
パーシェ指数は、比較時点の数量をベースとして、基準地点に対する比較時点の物価の変動具合を比率(基準値: 100)で表したものです。
具体的には、パーシェ指数 \( P_P \) は次のように定義されます。
パーシェ指数は、次の式により計算できる。
※ 基準時数量は計算に使わないのがポイント!!
上の式を文字式で書くと、次の通りとなる。
\[
P_L = \frac{ \sum^{n}_{k = 1} \textcolor{orange}{ p_{1k} } \textcolor{magenta}{ q_{1k} } }{ \sum^{n}_{k = 1} \textcolor{green}{p_{0k}} \textcolor{magenta}{ q_{1k} } } \times 100
\]
--- 文字式内の記号の意味 ---
- 基準時のパラメータ
- \( \textcolor{green}{p_{0k} } \) … \( k \) 番目の項目における基準時の価格
- \( \textcolor{deepskyblue}{q_{0k}} \) … \( k \) 番目の項目における基準時の数量
- 比較時のパラメータ
- \( \textcolor{orange}{ p_{1k} } \) … \( k \) 番目の項目における比較時の価格
- \( \textcolor{magenta}{ q_{1k} } \) … \( k \) 番目の項目における比較時の数量
- \( n \) … 項目の数
パーシェ指数の計算例を、先ほどと同じように例題で確認しましょう。
桃山研究室では、毎年大学の文化祭でハンバーガーショップの模擬店を開いている。2023年を基準とした2024年の物価の変動具合を計算するために、模擬店の売上データを確認したところ、以下の表の通りであることがわかった。
このデータをもとに、パーシェ指数 \( P_P \) を計算しなさい。結果は小数第1位まで示すこと。
価格 (ハンバーガー) | 数量 (ハンバーガー) | 価格 (チーズバーガー) | 数量 (チーズバーガー) | |
---|---|---|---|---|
基準年 (2023年) | 200 | 100 | 250 | 80 |
比較年 (2024年) | 180 | 50 | 200 | 120 |
解説2
パーシェ指数の公式に、与えられたデータの値を与えて計算しましょう。
価格 (ハンバーガー) | 数量 (ハンバーガー) | 価格 (チーズバーガー) | 数量 (チーズバーガー) | |
---|---|---|---|---|
基準年 (2023年) | 200 | 100 | 250 | 80 |
比較年 (2024年) | 180 | 50 | 200 | 120 |
\[\begin{align*}
P_P & = \frac{ \textcolor{orange}{180} \times \textcolor{magenta}{50} + \textcolor{orange}{200} \times \textcolor{magenta}{120} }{ \textcolor{green}{200} \times \textcolor{magenta}{50} + \textcolor{green}{250} \times \textcolor{magenta}{120} } \times 100
\\ & = \frac{ 9000 + 24000 }{ 10000 + 30000 } \times 100
\\ & = \frac{ 33000 }{ 40000 } \times 100
\\ & = 0.825 \times 100
\\ & = 82.5
\end{align*}\]
よって、パーシェ指数は 82.5 と求められます。
パーシェ指数の注意点.
パーシェ指数は、基準時点と比較時点の数量のうち、比較時点の数量のみを計算に使用します。そのため、基準時点の数量はパーシェ指数に一切影響しません。
消費者は価格が上昇すると、その商品を購入する量を減らすことが多いです。パーシェ指数では、価格上昇が数量の減少によって和らげられるため、物価の変動度合いが過小に評価される点に注意が必要です[2] … Continue reading。
スポンサードリンク
3. フィッシャー指数
ラスパイレス指数、パーシェ指数は、ともに物価の変動度合いを表す指数です。しかし、ラスパイレス指数では実際よりも物価の変動度合いを過大に評価してしまう傾向が、パーシェ指数では実際よりも物価の変動度合いを過小に評価してしまう傾向があります。
そこで、ラスパイレス指数とパーシェ指数の幾何平均(相乗平均)を取った新たな指標が生まれました[3]ラスパイレス指数 \( P_L \) 、パーシェ指数 \( P_P \) … Continue reading。この指標を、フィッシャー指数と呼びます。
フィッシャー指数 \( P_F \) は、ラスパイレス指数と \( P_L \)、パーシェ指数 \( P_P \) の幾何平均(相乗平均)で計算できる。
\[
P_F = \sqrt{ P_L \times P_P }
\]
フィッシャー指数を使うことで、ラスパイレス指数とパーシェ指数の偏りを中和させ、パーシェより中立的でバランスの取れた方法で物価の変動度合いを確認することができます。
フィッシャー指数の計算例を、先ほどと同じように例題で確認しましょう。
桃山研究室では、毎年大学の文化祭でハンバーガーショップの模擬店を開いている。2023年を基準とした2024年の物価の変動具合を計算するために、模擬店の売上データを確認したところ、以下の表の通りであることがわかった。
価格 (ハンバーガー) | 数量 (ハンバーガー) | 価格 (チーズバーガー) | 数量 (チーズバーガー) | |
---|---|---|---|---|
基準年 (2023年) | 200 | 100 | 250 | 80 |
比較年 (2024年) | 180 | 50 | 200 | 120 |
ここで、ラスパイレス指数が85.0、フィッシャー指数が82.5であることを利用して、フィッシャー指数 \( P_F \) を計算しなさい。結果は平方根が残っていても構わない。
解説3.
フィッシャー指数の公式に、
- ラスパイレス指数 \( P_L = 85.0 \)
- パーシェ指数 \( P_P = 82.5 \)
を代入して計算しましょう。
\[\begin{align*}
P_F & = \sqrt{ P_L \times P_P }
\\ & = \sqrt{ 85.0 \times 82.5 }
\\ & = \sqrt{ 7012.5 }
\\ & \fallingdotseq 83.7
\end{align*}\]
よって、フィッシャー指数は \( \sqrt{ 7012.5 } \) と求められます。
4. 練習問題にチャレンジ
最後に、実際に練習問題に挑戦してみましょう!
ある市では、つぎの3種類の1日券を販売している。
- 券A: 地下鉄1日券
- 券B: バス1日券
- 券C: 地下鉄・バス共通1日券
以下のデータは、基準日と比較日における券A〜券Cの販売価格、および販売した数量を示している。
券A 価格 | 券A 数量 | 券B 価格 | 券B 数量 | 券B 価格 | 券C 数量 | |
---|---|---|---|---|---|---|
基準日 | 600 | 200 | 500 | 400 | 800 | 100 |
比較日 | 800 | 150 | 700 | 200 | 900 | 200 |
このデータを元に、(1)〜(3)の問いに答えなさい。
(1) ラスパイレス指数 \( P_L \) を計算しなさい。結果は小数第1位まで示すこと。
(2) パーシェ指数 \( P_P \) を計算しなさい。結果は小数第1位まで示すこと。
(3) フィッシャー指数 \( P_F \) を計算しなさい。電卓推奨です。結果は小数第1位まで示すこと。(電卓がない場合は、ルートを外さなくてよい。)
5. 練習問題の答え
以下のデータから、(1) ラスパイレス指数、(2) パーシェ指数、(3) フィッシャー指数を計算していきます。
券A 価格 | 券A 数量 | 券B 価格 | 券B 数量 | 券B 価格 | 券C 数量 | |
---|---|---|---|---|---|---|
基準日 | 600 | 200 | 500 | 400 | 800 | 100 |
比較日 | 800 | 150 | 700 | 200 | 900 | 200 |
(1) ラスパイレス指数 \( P_L \)
★ 公式
★ 計算過程
\[\begin{align*}
P_L & = \frac{ \textcolor{orange}{800} \times \textcolor{deepskyblue}{200} + \textcolor{orange}{700} \times \textcolor{deepskyblue}{400} + \textcolor{orange}{900} \times \textcolor{deepskyblue}{100} }{ \textcolor{green}{600} \times \textcolor{deepskyblue}{200} + \textcolor{green}{500} \times \textcolor{deepskyblue}{400} + \textcolor{green}{800} \times \textcolor{deepskyblue}{100} } \times 100
\\ & = \frac{ 160000 + 280000 + 90000 }{ 120000 + 200000 + 80000 } \times 100
\\ & = \frac{ 530000 }{ 400000 } \times 100
\\ & = 1.325 \times 100
\\ & = 132.5
\end{align*}\]より、ラスパイレス指数は 132.5。
(2) パーシェ指数 \( P_P \)
★ 公式
★ 計算過程
\[\begin{align*}
P_L & = \frac{ \textcolor{orange}{800} \times \textcolor{magenta}{100} + \textcolor{orange}{700} \times \textcolor{magenta}{200} + \textcolor{orange}{900} \times \textcolor{magenta}{200} }{ \textcolor{green}{600} \times \textcolor{magenta}{100} + \textcolor{green}{500} \times \textcolor{magenta}{200} + \textcolor{green}{800} \times \textcolor{magenta}{200} } \times 100
\\ & = \frac{ 80000 + 140000 + 180000 }{ 90000 + 100000 + 160000 } \times 100
\\ & = \frac{ 400000 }{ 320000 } \times 100
\\ & = 1.25 \times 100
\\ & = 125
\end{align*}\]より、パーシェ指数は 125.0。
(3) フィッシャー指数 \( P_F \)
\[\begin{align*}
P_F & = \sqrt{ P_L \times P_P }
\\ & = \sqrt{ 132.5 \times 125.0 }
\\ & = \sqrt{ 16562.5 }
\\ & \fallingdotseq 128.7
\end{align*}\]より、フィッシャー指数は 128.7。
6. まとめ
ラスパイレス指数、パーシェ指数の計算方法は、以下の通りです。
フィッシャー指数の計算方法は、以下の通りです。\[
\mathrm{ フィッシャー指数 } \ = \ \sqrt{ \mathrm{ ラスパイレス指数 \ \times \ パーシェ指数 } }
\]
注釈
↑1 | 例えば、基準時点で商品Aが100円で100個売れていたが、比較時点では商品Aが200円に値上がりして80個売れているとしましょう。このとき、ラスパイレス指数は比較時点での個数の減少を無視し、そのまま値上がり分を反映してしまいます。 |
---|---|
↑2 | 例えば、基準時点で商品Aが100円で100個売れていたが、比較時点では商品Aが200円に値上がりし、80個売れているとしましょう。このとき、パーシェ指数は比較時点での個数の減少をもとに、物価の変動度合いを計算してしまいます。 |
↑3 | ラスパイレス指数 \( P_L \) 、パーシェ指数 \( P_P \) は割合(相対的な値)を表しているものなので、単純に相加平均\[ \frac{P_L+P_P}{2} \]しただけでは正しい平均が出せません。 |
関連広告・スポンサードリンク