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こんにちは、ももやまです。
今回はマクローリン展開を用いた極限の技の紹介をします。
(ランダヴ記号を用いた記述法も紹介しているので余裕がある人はこちらもご覧ください。)
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1.マクローリン展開(復習)
\( x \fallingdotseq 0 \) のとき、マクローリン展開を用いることで関数 \( f(x) \) を多項式だけで表すことができます。
\[\displaylines{ e^x = 1 + x + \frac{1}{2} x^2 + \frac{1}{6} x^3 + \frac{1}{24} x^4 + \frac{1}{120} x^5 + \cdots \\ \sin x = x - \frac{1}{6} x^3 + \frac{1}{120} x^5 + \cdots \\ \cos x = 1 - \frac{1}{2} x^2 + \frac{1}{24} x^4 - \frac{1}{720} x^6 + \cdots
\\ \tan x = x + \frac{1}{3} x^3 + \frac{2}{15} x^5 + \cdots \\
}\]
特に覚えて欲しいのが \( \tan x \) です。
ロピタルの定理を使おうとしても微分した際に変形がめんどくさい形になるので、\( \tan x \) が出てくるような極限に対してはロピタルの定理よりもマクローリン展開を用いた極限のほうが早く答えを出すことができます。
マクローリン展開がまだよくわかっていない人はこちらの記事をご覧ください。
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2.実際に極限計算
では、1つマクローリン展開を用いて極限を求めてみましょう。
例題
\[ \lim_{x \to 0} \frac{ \tan 3x}{ \sin 2x } \]を求めなさい。
解説
\( R_2 \) をマクローリン展開の2次以降の項*1とします。
\( \tan x \), \( \sin x \) のマクローリン展開はそれぞれ\[
\tan x = x + R_2 \]\[
\sin x = x + R_2
\]ですね。
そのため、\( \sin x \) の \( x \) を \( 2x \) に、\( \tan x \) の \( x \) を \( 3x \)にすると、\( \tan 3x \), \( \sin 2x \) のマクローリン展開は、\[
\tan 3x = 3x + R_2 \]\[
\sin 2x = 2x + R_2
\]となります。
よって、\[ \begin{align*} \lim_{x \to 0} \frac{ \tan 3x}{ \sin 2x } & = \lim_{x \to 0} \frac{ 3x + R_2}{ 2x + R_2 }
\\ & = \lim_{x \to 0} \frac{3 + \frac{R_2}{x} }{2 + \frac{R_2}{x}} \\ & = \frac{3}{2} \end{align*} \]と計算できる*2。
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3.ランダヴ記号を用いた書き方
より厳密にマクローリン展開を用いた極限計算の過程を表したいときにはランダヴ記号を用います。\[f(x) = \lim_{x \to 0} \frac{f(x)}{x^n} = 0 \]となるとき、ランダヴ記号を用いて \( f(x) = o(x^n) \) と書くことができます。
このとき \( o(x^n) \) は、\( x^n \) に比べて非常に小さいことを意味します。
マクローリン展開の場合、 \( n+1 \) 次以降の項は \( n \) 次までの項に比べて非常に小さいので、\( o(x^{n}) \) と書くことができます。
今回の場合、\( x \) の2次以降の項を \( o(x) \) とランダヴの記号を使って書くことで、\( o(x) \) は \( x \) の項に比べて非常に小さいことを表現できます。
先程の例題をランダヴの記号を使って解きます。\[ \sin 2x = 2x + o(x) \\ \tan 3x = 3x + o(x) \]となり、\[ \begin{align*}
\lim_{x \to 0} \frac{ \tan 3x}{ \sin 2x } & =
\lim_{x \to 0} \frac{ 3x + o(x) }{ 2x + o(x) }
\\ & = \lim_{x \to 0} \frac{3 + \frac{o(x)}{x} }{2 + \frac{o(x)}{x}} \\ & = \frac{3}{2} \end{align*} \]と書くことができます。
ランダヴ記号の演算では、\[\displaylines{
C o(x^n) = o(x^n) \\
o(x^m) o(x^n) = o(x^{m+n}) \\
x^m o(x^n) = o(x^{m+n}) \\
o(x^m) \pm o(x^n) = o(x^m) \ \ (m \leqq n)
}\]が成立する。ただし、\( C \) は定数。
例えば、\[ 3 o(x^5) + 5 o(x^3) = o(x^5) + o(x^3) = o(x^3) \] のように計算をしてあげることができます(ランダヴ記号同士の加減算では次数が小さい方が適用される)。
ただし、\[ o(x^n) - o(x^n) = o(x^n) \]であって、0ではないことに注意してください*3。
4.練習問題
では3問ほど練習していきましょう。
つぎの(1)〜(3)の極限をマクローリン展開を用いて求めなさい。
(途中式は書きたい人だけが書いてください。)
(1) \[ \lim_{x \to 0} \left( \frac{\tan x}{x^3} - \frac{\cos x}{x^2} \right) \]
(2) \[ \lim_{x \to 0} \frac{\tan x - \sin x}{x^3} \]
(3) \[ \lim_{x \to 0} \frac{\log ( \tan x + 1 )}{x} \]
5.練習問題の答え
\[\displaylines{
\sin x = x - \frac{1}{6} x^3 + \frac{1}{120} x^5 + \cdots \\
\cos x = 1 - \frac{1}{2} x^2 + \frac{1}{24} x^4 + \cdots \\
\tan x = x + \frac{1}{3} x^3 + \frac{2}{15} x^5 + \cdots }\]を使います。
ランダヴ記号使わないバージョン
途中過程が求められない試験などでは圧倒的に早く極限を求めることができます。
(数検1級の1次試験も途中過程が不要なので使えます)
途中式が求められる場合はこの書き方はおそらく減点されるので最終手段だと思ってください。
(1)
\( \tan x \) は \( x^3 \) の項まで、\( \cos x \) は \( x^2 \) の項まで求めれば不定形が解消される。\[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \left( \frac{\tan x}{x^3} - \frac{\cos x}{x^2} \right) \\ = &
\lim_{x \to 0} \left( \frac{x + \frac{1}{3} x^3 }{x^3} - \frac{1 - \frac{1}{2} x^2 }{x^2} \right)
\\ = & \lim_{x \to 0} \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{3} \right) - \left( \frac{1}{x^2} - \frac{1}{2} \right)
\\ = & \frac{1}{3} + \frac{1}{2} = \frac{5}{6}
\end{align*} \]
(2)
\( \tan x \), \( \sin x \) ともに \( x^3 \) の項まで求めれば不定形が解消される。\[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \frac{\tan x - \sin x}{x^3} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\left( x + \frac{1}{3} x^3 \right) - \left(x - \frac{1}{6}x^3 \right) }{x^3}
\\ = & \lim_{x \to 0} \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{3} - \left( \frac{1}{x^2} - \frac{1}{6} \right) \right)
\\ = & \frac{1}{3} + \frac{1}{6} = \frac{1}{2}
\end{align*} \]
(3)
\( \tan x = x \) (つまり1次までのマクローリン展開)とすれば極限の基本形式にもっていくことができる。\[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( \tan x + 1 )}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( 1 + \tan x )}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( 1 + x)}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \log \left(1 + x \right)^{ \frac{1}{x} } \\ = &
\log e = 1
\end{align*} \]となる。
ランダヴ記号使うバージョン
途中過程が求められる場合はこちらの書き方を推奨します(減点されないとは言ってませんが……)。\[ \lim_{x \to 0} \frac{o(x^n)}{x^n} = 0\] になるのを使っています。
(1)
\[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \left( \frac{\tan x}{x^3} - \frac{\cos x}{x^2} \right) \\ = &
\lim_{x \to 0} \left( \frac{x + \frac{1}{3} x^3 + o(x^3) }{x^3} - \frac{1 - \frac{1}{2} x^2 + o(x^3) }{x^2} \right)
\\ = & \lim_{x \to 0} \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{3} + \frac{o(x^3)}{x^3} \right) - \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{2} + \frac{o(x^3)}{x^3} \right)
\\ = & \frac{1}{3} + \frac{1}{2} = \frac{5}{6}
\end{align*} \]
(2)\[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \frac{\tan x - \sin x}{x^3} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\left( x + \frac{1}{3} x^3 + o(x^3) \right) - \left(x - \frac{1}{6}x^3 + o(x^3) \right) }{x^3}
\\ = & \lim_{x \to 0} \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{3} + \frac{o(x^3)}{x^3} - \left( \frac{1}{x^2} - \frac{1}{6} + \frac{o(x^3)}{x^3} \right) \right)
\\ = & \frac{1}{3} + \frac{1}{6} = \frac{1}{2}
\end{align*} \]
(3) \[ \begin{align*} &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( \tan x + 1 )}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( 1 + \tan x )}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \frac{\log ( 1 + x + o(x))}{x} \\ = &
\lim_{x \to 0} \log \left(1 + x + o(x) \right)^{ \frac{1}{x} } \\ = &
\log e = 1
\end{align*} \]となる。
6.さいごに
今回は、マクローリン展開を用いて極限を求める方法、ランダヴ記号を用いた記述方法についてまとめました。
特に \( \tan x \) が登場してくる極限に有効な技なのでぜひ \( \tan x \) のマクローリン展開は5次の項まで覚えましょう!
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