うさぎでもわかる解析 Part02 逆三角関数

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こんにちは、ももやまです。
今回は解析の前半で習う逆三角関数についてまとめました。

前回のロピタルの定理と同様、演習問題が若干多めです。

前回のロピタルの定理はこちらから↓

www.momoyama-usagi.com

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1.逆三角関数とは

たとえば、y=sinx の逆関数を考えてみましょう。逆関数にすると、 x=sin1y  となります。

同様に y=cosx の逆関数は x=cos1yy=tanx の逆関数は x=tan1y となります。

sin1x(sinx)1 に注意してください。
逆三角関数の -1 表記は、-1乗という意味ではありません

これらの逆関数の x,y を入れ替えた、y=sin1xy=cos1xy=tan1x の定義域と値域はつぎのようになります。

  定義域 値域
y=sin1x 1x1 π2yπ2
y=cos1x 1x1 0yπ
y=tan1x すべての実数 π2<y<π2

定義域値域に注意が必要です。

逆三角関数の定義域は、もともとの三角関数 sinxcosxtanx が取りうる値となっています。
(例えば sinx=2 を満たすような x なんて実数世界上には存在しませんね……。なので逆三角関数の定義域にもなっていません。)

また、値域も限定されています。

例えば、sinx=12 を満たす x を考えます。
このとき、x の値は 2π 周期で無限に存在します。

逆三角関数の値域が存在しなかった場合、逆三角関数の答えが無限に考えられてしまうため、上のように値域を限定しているのです(なるべく便利なように値域を設定するため、cosx の値域が sinxtanx とは異なっていることに注意)。

また、つぎのように逆三角関数を表記する人もいます。

sin1xarcsinx
cos1x → arccosx
tan1xarctanx

成り立つ関係

逆三角関数には次の関係が成り立ちます。

まずほぼ自明ですが、sin(sin1x)=x  (1x1)sin1(sinx)=x  (π2xπ2)cos(cos1x)=x  (1x1)cos1(cosx)=x  (0xπ)tan(tan1x)=xtan1(tanx)=x  (π2<x<π2)が成り立ちます。

ここからは、逆三角関数に成り立つ関係を示していきながら紹介しましょう。

まずは、sin(cos1x)=1x2  (1x1)を示してみましょう。

cos1x=t とおくと、
sin(cos1x)=sint=1cos2t=1cos2(cos1x)=1x2 と示せます*1

同様の方法でcos(sin1x)=1x2  (1x1)も示すことができます。

つぎに、sin1x+cos1x=π2  (1x1)を示します。

x=sint とすると、x=cos(π2t) と表せます。よって、sin1sint+cos1cos(π2t)=t+(π2t)=π2が示せます。

例題1

sin112 ,  cos1(32) ,  tan13をそれぞれ計算しなさい。

解説1

順番に解いていきましょう。

sin112 は、sinx=12 のときの x の値はいくらですか? と言い換えることができます。

同様に、cos132 は、cosx=32 のときの x の値は? と、tan13 は、tanx=3 のときの x の値は? と言い換えることができます。よって答えは順番に π6,   56π,   π3となります。

例題2

(1) cos(tan1x)=11+x2を示しなさい。
(2) sin(tan1x)=x1+x2を示しなさい。

解説2

tan1x=t とおく。

(1) cos(tan1x)=cost=cos2t=11+tan2t=11+tan2t=11+tan2(tan1x)=11+x2と示せる。

(2) (1)の結果を使って示すのがおすすめ。sin(tan1x)=sint=costtant  (sintcost=tant)=cos(tan1x)tan(tan1x)=11+x2x=x1+x2と示せる。

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2.逆三角関数のグラフ

それぞれの逆三角関数をグラフにすると、つぎのようになります。

(1) 逆正弦関数  sin1x

f:id:momoyama1192:20190620074119g:plain

(2) 逆余弦関数  cos1x

f:id:momoyama1192:20190620074123g:plain

(3) 逆正接関数  tan1x

f:id:momoyama1192:20190620074127g:plain

逆正接関数 tan1x は、y=±π2 で漸近線となっていますね。

また、グラフから、limxtan1x=π2limxtan1x=π2であることがわかります。

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3.逆三角関数の微分

それぞれの逆三角関数の導関数を、逆関数の微分公式を使って求めることができます。

微分公式の導出

(1) 逆正弦関数の微分公式の導出

y=sin1x   (1<x<1)の逆関数は、x=siny   (π2<y<π2)となり、dxdy=cosyとなります。

あとは、逆関数の微分公式を使えば、ddxsin1x=dydx=1dxdy=1cosy=1cos2y=11sin2y=11x2と導出することができます。

(2) 逆余弦関数の微分公式の導出

(1)と同様にして微分公式を導出することができます。y=cos1x   (1<x<1)の逆関数は、x=cosy   (0<y<π)となり、dxdy=sinyとなります。

あとは、逆関数の微分公式を使えば、ddxcos1x=dydx=1dxdy=1siny=1sin2y=11cos2y=11x2と導出することができます。

(3) 逆正接関数の微分公式の導出

y=tan1xの逆関数は、x=tany   (π2<y<π2)となり、dxdy=1cos2yとなります。ここで、1cos2y=1+tan2yなので、逆関数の微分公式よりddxtan1x=dydx=1dxdy=11cos2y=11+tan2y=11+x2と導出することができます。

POINT1

逆三角関数の微分公式ddxsin1x=11x2ddxcos1x=11x2ddxtan1x=11+x2

では1問例題を解いてみましょう。

例題3

y=sin1x5の導関数をもとめなさい。

解説3

合成関数の微分を使う。 t=x5 とする。

すると、y=sin1t,  t=x5となる。dydt=11t2=11(x5)2=525x2,  dtdx=15となるので、dydx=dydtdtdx=525x215=125x2となる。

つぎのような定数 a を含んだつぎの公式も頭に入れておくと計算がスムーズになるので覚えていたらいいかもしれません(合成関数の微分公式を使います)。

POINT2

定数 a を含んだ逆三角関数の微分公式ddxsin1xa=1a2x2ddxcos1xa=1a2x2ddxtan1xa=aa2+x2

例題4

関数 f(x)=sin1x+cos1x について、つぎの問いに答えなさい。
ただし、1x1 とする。

(1) f(0),f(12) の値を求めなさい。
(2) 導関数 f(x) を求めなさい。
(3) 関数 f(x) のグラフを図示しなさい。

解説4

(1) f(0)=sin10+cos10=π2f(12)=f(x)=sin112+cos112=π6+π3=π2

(2) f(x)=11x211x2=0

(3) (2)より、x の値に関わらず値が不変なことがわかる。また、(1)より f(x)=π/2 となることがわかる。よってグラフは、

f:id:momoyama1192:20190620081101g:plain

となる。

4.逆三角関数の積分公式

上の微分公式から、積分公式も得ることができます。

POINT1

逆三角関数の積分公式11x2dx=sin1x+C11x2dx=cos1x+C11+x2dx=tan1x+Cただし、C は積分定数。

皆さんは数学3で、01211x2dxのような定積分を計算したことがありますか。

高校までは、x=sint とおいて、置換積分をしていましたね。

しかし、これも上の積分公式を使うことですぐに答えを出すことができるようになります。

逆三角関数を使った場合01211x2dx=[sin1x]012=π6とすぐに使える求めることができます。

おまけ(数3でのやり方)

x=sint とおくと dx=cost dt となり、積分範囲は 012 から 0π6 となる。

よって、01211x2 dx=0π6cost1sin2t dt=0π6costcos2t dt=0π61 dt=[t]0π6=π6と求められます。

5.練習問題

では、実際に何問か解いてみましょう。

練習1

次の(1)~(3)の計算結果を答えなさい。

(1) sin122+cos112+tan1(33)

(2) sin1(32)+cos10+tan1(1)

(3) tan113+tan112

練習2

次の(1)~(3)の導関数をもとめなさい。

(1) y=tan1x3 (2) y=3sin1xcos1x (3) y=tan1(12tanx2)

練習3

次の(1)~(3)の定積分、不定積分をもとめなさい。

(1) 1314x2dx (2) 03x2x2+9dx (3) sin1xdx

6.練習問題の解答

解答1

次の(1)~(3)の計算結果を答えなさい。

(1) sin122+cos112+tan1(33)=π4+π3π6=512π

(2) sin1(32)+cos10+tan1(1)=π3+π2π4=π12

(3) a=tan113,  b=tan112とおく。すると、tana=13,  tanb=12となる。

ここで、加法定理を用いると、tan(a+b)=tana+tanb1tanatanb=13+1211312=5656=1となるので、tan113+tan112=tan11=π4と求められる。

解答2

(1)

t=x3 とする。

すると、y=tan1t,  t=x3となる。dydt=11+t2=11+(x3)2=99+x2,  dtdx=13となるので、dydx=dydtdtdx=99+x213=39+x2となる。

(2) dydx=3(cos1x1x2sin1x1x2)=31x2(cos1xsin1x)

(3)

t=12tanx2 とする。

すると、y=tan1t,  t=12tanx2となる。dydt=11+t2=11+12tan2x2=11+12sin2x2cos2x2,  dtdx=122cos2x2となるので、
dydx=dydtdtdx=122cos2x2(1+12sin2x2cos2x2)=12(2cos2x2+sin2x2)=12(1+cos2x2)   (cos2x2+sin2x2=1) となる。

解答3

(1) (逆三角関数の積分を利用)1314x2dx=13121x24dx=121311(x2)2dxと変形し、x2=t とおく。12dx=dt となり、積分範囲は 1232 となる。12123211(x2)2dx=123211t2dt=[sin1t]1232=π3π6=π6 [別解 x=2sint と置く 数3っぽく]

x=2sint とおく。dx=2costdt となり、積分範囲は π6π3 となる。

1314x2dx=π6π32cost44sin2tdt=π6π32cost2cos2tdt=π6π31dt=[t]π6π3=π3π6=π6

(2) 03x2x2+9dx=03(19x2+9)dx=031dx039x2+9dxと変形できる。

[逆三角関数使って変形]

039x2+9dx=031x29+1dx=031(x3)2+1dxと変形してから x3=t とおく。13dx=dt となり、積分範囲は 01 となる。 031(x3)2+1dx=3011t2+1dt=3011t2+1dt=3[tan1t]01=3π4=34πとなる。

[ x=3tant と置く 数3っぽく]

x=3tant とおく。dx=3cos2tdt となり、積分範囲は 0π4 となる。

0π49x2+9dx=0π499tan2t+93cos2tdt=0π4cos2t3cos2tdt=0π43dt=[t]0π4=34π

と求められる。あとは上の式を計算するだけ、031dx039x2+9dx=[x]0334π=334πとなる。

(3)  部分積分を行う。積分定数を C として、sin1x=xsin1xx1x2=xsin1x(1221x2)=xsin1x+1x2+Cと求められる。

7.さいごに

今回は逆三角関数についてのまとめを行いました。

逆三角関数を用いると、高校までやっていた x=sint とおくような積分が一瞬で解けてしまいましたね。

期末試験や数検1級では、逆三角関数の性質だけでなく、微分や積分が頻出するので、逆三角関数の微分積分にも慣れましょう。

*1:一応念のために確認。cos2x(cosx)2 を表しています。なので、cos2(cos1x)=(cos(cos1x))2=x2となります。

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