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ここでは、線形代数の分野の1つ「逆行列」の問題演習をひたすらすることができます。

問題PDFも用意したので、チャレンジしたい方はまずはPDFをダウンロードし、問題を解いてください。

もっと逆行列計算(掃き出し法・余因子)の基本的なところから知りたい人は、まずは下の解説記事からご覧ください!

掃き出し法編

余因子編

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要点チェック

要点チェック:問題

1. 行列 A とその逆行列 A1 に対して、成り立つ関係式は?

ア: A=A1
イ: AA1=O
ウ:AA1=E
エ:AA1=A

2. n 次正方行列 A が逆行列を持つとき、行列式 |A| と階数 Rank A に成り立つ関係式は?

ア: Rank A=n,   |A|=0
イ: Rank A=n,   |A|0
ウ:Rank An,   |A|=0
エ:Rank An,   |A|0

3. n 次正方行列 A の行列式 |A| と逆行列の行列式 |A1| に対して、成り立つ関係式は?

ア: (AB)1=A1B1,   (kA)1=kA1
イ: (AB)1=A1B1,   (kA)1=1kA1
ウ:(AB)1=B1A1,   (kA)1=kA1
エ:(AB)1=B1A1,   (kA)1=1kA1

4. n 正方行列 A の行列式 |A| と逆行列の行列式 A1 に対して成り立つ関係式は?

ア: |A1|=|A|
イ: |A1|=1|A|

5. n 次正方行列 A の転置行列を tA とする。 成立する関係式はどちらか?

ア: (tA)1=   t(A1)
イ: (tA)1=t(A1)

[解答]

覚えておいてほしい逆行列の基本公式
[逆行列の定義]

AX=XA=E を満たす正方行列 X のことを逆行列と呼び、A1 と表記する。

[逆行列の特徴]
  • n 次正方行列 A が逆行列を持つ場合、それを正則と呼ぶ。そのとき、次の
    1. Rank A=n
    2. |A|0
    3. 連立方程式 Ax=0 の解は自明な解 (x=0) のみ。
  • 逆行列の分解公式(積・定数倍)(AB)1=B1A1,   (kA)1=1kA1
  • 逆行列と転置の入れ替えが可能: (tA)1=   t(A1)
  • 逆行列の行列式は元の(行列の)行列式の逆数|A1|=1|A|

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計算例題.掃き出し法による逆行列の計算

計算例題
[誘導] 部分の [ 1 ] ~ [ 7 ] に当てはまる数字を埋めることで、行列A=(5734)の逆行列を求めなさい。

[誘導]

(A|E)=(57103401)(571015200[  1  ])(57100[  2  ][  3  ][  1  ])(10[  4  ][  5  ]01[  6  ][  7  ])=(E|A1)

よって、逆行列はA1=([  4  ][  5  ][  6  ][  7  ])と計算できる。

[解答]

No.01: 5
No.02: 1
No.03: -3
No.04: -4
No.05: 7
No.06: -3
No.07: 5

掃き出し法による逆行列の計算方法
[基本方針]

行列 (A|E) を行基本変形し、(E|A1) の形にする。

※ 列基本変形をしてもよいが、行基本変形と列基本変形を混合して使用するのはNG

[具体的な計算手順]
  1. ある1列に着目し、1つの成分以外をすべて0にする。(5710152005)(57100135)
  2. 1(ある1列に着目し、1つの成分以外をすべて0にすること)を、他すべての列にも適用すればOK。
  3. 行基本変形の最中に分数を出さないこと! → 問1(3)で練習可能
    (分数が出る計算は、行基本変形の最後にまとめてすること)

[解説]

(A|E)=(57103×54×50×51×5)=(5710151520+21035)=(57+71210+350135)=(5÷50÷520÷535÷50135)=(10470135)となるので、A1=(4735)となる。

※ 計算後には、定義式 AA1=E による検算を必ずしましょう。例題の場合は、下のような計算をすることになります。AA1=(5734)(4735)=(1001)=E無事単位行列 E になっていれば、テストの際にも安心ですね!

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レベル1. 基本レベル [単位取りたい人~優(A)狙いの人向け]

問1. 逆行列の基本的な計算

問1

次の(1)~(3)の行列に対して、逆行列を計算しなさい。

(1)(1314)

(2)(160321331)

(3)(102465353)

例題では、掃き出し法による逆行列の計算方法を学びましたが、掃き出し法以外の逆行列計算方法もここで確認しておきましょう。

特に2次正方行列の逆行列は、公式で計算できるようになっておくことを強くおすすめします。
(計算速度がかなり変わるため)

2次正方行列の逆行列

A=(abcd),   A1=1|A|(dbca)

3次以上の正方行列の逆行列は、余因子と呼ばれるものを使って計算をします。

3次正方行列以上の逆行列

3次以上の正方行列の場合、掃き出し法を使わずに逆行列を計算するためには余因子の計算が必要になってくる。

[余因子]

ある行列から、特定の行( i 行)と列(j 列)を除いた行列の行列式のことを余因子といい、記号 Δij で表す。

ただし、行番号 i と列番号 j の和 i+j が奇数の場合、余因子は-1倍される。

例えば、行列A=(160321331)の1行2列の余因子 Δ12 は、Δ12=(1)1+2|3131|で計算できる。

i+j が奇数であれば-1倍というのは、(1)i+j で表現可能

[余因子と逆行列]

ある行列 A の余因子を元の行列に対応する形で並べ、さらに転置させた行列のことを余因子行列と呼び、A~ で表す。A~=(Δ11Δ12Δ1nΔ21Δ22Δ2nΔn1Δn2Δnn)=(Δ11Δ21Δn1Δ12Δ22Δn2Δ1nΔ2nΔnn)※ システムの都合上、転置行列を A で表記しております。

さらに逆行列 A1 は、余因子行列 A~ を用いて、A1=1|A|A~と求めることができる。

掃き出し法と(余因子)公式、どちらを使うかは皆さんの慣れ具合などで変わってくるかと思いますが、参考までに私が

  • 2次正方行列の逆行列:公式
  • 3次正方行列の逆行列:掃き出し法と方式どっちでもOK(慣れている方で)
  • 4次以上の正方行列の逆行列:掃き出し法
    (ただし、本記事の問4のように逆行列のある1つの成分のみを計算で求められいる場合は掃き出し法)

[解説1]

(1)

[掃き出し法で解く場合]

(A|E)=(13101401)(13100111)(10430111)(10430111)=(E|A1)となるので、A1=(4311)となる。

[逆行列の公式を使って解く場合]

|A|=1 より、A=(1314)A1=11(4311)=(4311)

[検算]

AA1=(1314)(4311)=(1001)=EよりOK。

(2)

[掃き出し法で解く場合]

(A|E)=(160100321010331001)=(1601003+321810+3103+331810+301)=(160100016+1511331010151301)=(16+601060+6010011015+15130151+15)=(1001660×(1)1×(1)0×(1)0×(1)1×(1)1×(1)00131516)=(10016601001100131516)

となるので、A1=(16601131516)と計算できる。

[余因子を使った場合]

まずは、それぞれの成分の余因子を計算しましょう。

Δ11=(1)1+1|2131|=1Δ12=(1)1+2|3131|=0Δ13=(1)1+3|3233|=3
Δ21=(1)2+1|6031|=6Δ22=(1)2+2|1031|=1Δ23=(1)2+3|1633|=15
Δ31=(1)3+1|6021|=6Δ32=(1)3+2|1031|=1Δ33=(1)3+3|1632|=16

次に行列式を計算しましょう。|A|=|160321331|=2+18+0(0+18+3)=1

よって、逆行列は、A1=1|A|(Δ11Δ12Δ13Δ21Δ22Δ23Δ31Δ32Δ33)=11(16601131516)=(16601131516)

(3)

[掃き出し法で解く場合]

(A|E)=(1021004465804103+353+60+301)(10210006+53+34+310+1053301)(102100010111053301)(1021000101110553350+51+5)(1×30×32×31×30×30×3010111003256)(30663+4010012010111003256)(30071012010111003256)(30071012010111003256)13(30071012030333003256)=(E|A1)

となるので、A1=13(71012333256)

[余因子を使った場合]

まずは、それぞれの成分の余因子を計算しましょう。

Δ11=(1)1+1|6553|=7Δ12=(1)1+2|4533|=3Δ13=(1)1+3|4635|=2
Δ21=(1)2+1|0253|=10Δ22=(1)2+2|1233|=3Δ23=(1)2+3|1035|=5
Δ31=(1)3+1|0265|=12Δ32=(1)3+2|1245|=3Δ33=(1)3+3|1046|=6

次に行列式を計算しましょう。|A|=|102465353|=18+0+40(36+25)=5861=3

よって、逆行列は、A1=1|A|(Δ11Δ12Δ13Δ21Δ22Δ23Δ31Δ32Δ33)=13(71012333256)=13(71012333256)

問2. 逆行列が存在するかの確認

問2

次の①~④の行列の中で、逆行列を持つ行列は何個あるか答えなさい。

(1234)

(2142)

(101100100101)

(471230351221)

解答: 2個

n 次正方行列 A が逆行列を持つかどうかは、Rank A=n もしくは |A|0 を確認すればOKです。

なので、より簡単に計算できる |A|0 で確認しましょう。

|1234|=46=20より、逆行列を持つ。

|2142|=44=0より、逆行列を持たない。

|101100100101|=10121002=(101+100)(101100)0より、逆行列を持つ。

④ そもそも正方行列ではないので、逆行列を持たない。

よって、逆行列を持つのは2個。

問3. 逆行列と連立方程式

問3

逆行列を用いて、次の連立方程式を計算しなさい。

(1){2x  y=   03x2y=1

(2){  x+  y3z=22x2y+  z=34x+  y7z=7

連立方程式 Ax=b の両辺の左端に A1 を掛けることで、Ax=bA1Ax=A1bEx=A1bx=A1bと変換できるので、A1b を計算していけばOKです。

逆行列と連立方程式

係数行列 A、右辺を集めた b、解ベクトル x を用いて連立方程式 Ax=b がある。

この連立方程式の解 b は、逆行列 A1 を用いてx=A1bと計算できる。

(1)

まずは、行列を用いた連立方程式の形式 Ax=b に書き換える。(2132)(xy)=(01)

次に、行列A=(2132)の逆行列を用いる。

2次正方行列なので逆行列の公式A=(abcd),   A1=1|A|(dbca)で計算すると、A1=1|A|(2(1)32)=14+3(2132)=(2132)となる。

よって、x=(2132)(01)=(201(1)302(1))=(12)=(xy)より、x=1 , y=2 と解が求まる。

(2)

(1)と同じように行列を用いた連立方程式の形式 Ax=b に書き換える。(113221417)(xyz)=(237)

次に、逆行列を求めればOK。3次なので掃き出し法、余因子どちらを使ってもOKだが、今回は掃き出し法で計算をする。

(A|E)=(11310022221+6021044147+120401)(11310004721003+4574+2011)(1113+21+20+10104+47828140+4012211)(101+13+101+3140011034012+22+201+618)(10013450×(1)0×(1)1×(1)10×(1)3×(1)4×(1)0101857)(100134500110340101857)(100134501018570011034)=(E|A1)となるので、A1=(134518571034)で計算できる。

よって、x=A1b=(134518571034)(237)=(132+4357182+5377102+3347)=(321)=(xyz)より、x=3 , y=2, z=1 と解が求まる。

レベル2. 応用レベル [秀(A+)取りたい人向け]

問4. 逆行列を持つ条件

問2

次の行列(310aa1731)が逆行列を持たないとき、a の値を答えなさい。

[解説]

逆行列を持たないという条件は Rank A<n|A|=0 など様々なありますが、やはり行列式で判定するのが素早く計算できておすすめです。

|A|=3a7+0(a+9)=3a7+a9=4a16=0より、a=4 と計算できます。

問5. 行列の変形

問5

次の行列 A, B, C, X で表される(1)~(4)の式を X= の形に変えなさい。ただし、括弧は使わないこと。

[例1] X+A=BX=BA
[例2] X=(AB)X=AB

(1) AX=B
(2) X=(ABC)1
(3) (AXB)1=C
(4) tAAX=B

[解説]

(1) AX=BA1AX=A1BEX=A1BX=A1B

(2) P=BC とおく。X=(ABC)1=(AP)1=P1A1=(BC)1A1=C1B1A1

(3) (AXB)1=C(AXB)(AXB)1=(AXB)CE=AXCBCAXC=BC+EA1AXCC1=A1(BC+E)C1EXE=A1BCC1+A1EC1X=A1BE+A1C1X=A1B+A1C1

(4) tAAX=B(tAA)1(tAA)X=(tAA)1BX=A1(tA)1BX=A1t(A1)B

今回使った変換公式
[復習]

(1) AE=EA=A
(2) A(B+C)=AB+AC, (A+B)C=AC+BC

[逆行列関連]

(3) AA1=A1A=E
(4) (AB)1=B1A1
(5) t(A1)=(tA)1

問6. 余因子を用いた逆行列計算

問2

次の [ ★ ] に当てはまる数字を答えなさい。ただし、[ ★ ] 以外の成分は求めなくてよい。

A=(5426421665246533),   A1=([        ][        ][        ][        ][        ][        ][    ][        ][        ][        ][        ][        ][        ][        ][        ][        ])

今回は、A12行3列成分さえ求めてしまえばOK

なので、掃き出し法ではなく、余因子を使って求める。

A1=1|A|(Δ11Δ12Δ13Δ14Δ21Δ22Δ23Δ24Δ31Δ32Δ33Δ34Δ41Δ42Δ43Δ44)=(Δ11Δ21Δ31Δ41Δ12Δ22Δ32Δ42Δ13Δ23Δ33Δ43Δ14Δ24Δ34Δ44)より、[ ★ ] の成分は Δ32 から求められる。

ここで、Δ32=(1)3+2|5264+51+2666+53+236|=1|5261101+11+13|=1|526110003|=1(3)|5211|=3(52)=9と計算できる。

また、|A|=|5844226+1242166854224+126+125+63+3318|=|380642162108611015|=(1)2+3(1)|3168+86+642186+2211111588|=|19070218280103|=(1)2+2|197028103|=(19)(103)7028=19571960=3より、[    ]=Δ32|A|=93=3となる。

レベル3. 発展レベル [線形代数で満点を取りたい人向け]

問7. 4次正方行列の逆行列

問7

次の行列の逆行列を計算しなさい。

(0210112124211210)

[解説]

4次正方行列の逆行列は、掃き出し法で計算するのがおすすめ。
(余因子で求めると、3次正方行列の行列式を16回計算する必要があるため)

(A|E)=(021010001121010022422+41+200+2101+12+1120100101)(022120210200+211+12+11+101+1001022223202210+201110101)(001212021033260+32601+600010012011+11+2011+2012)(0012+2120+22+41004+4340+45+80001001201011110112)(0×(1)0×(1)1×(1)0×(1)1×(1)2×(1)2×(1)6×(1)1×(1)0×(1)0×(1)0×(1)3×(1)4×(1)4×(1)13×(1)000100120×(1)1×(1)0×(1)0×(1)1×(1)1×(1)1×(1)3×(1))(001012261000344130001001201001113)(100034413010011130010122600010012)=(E|A1)

となるので、逆行列は以下の通りになる。A1=(34413111312260012)

問8. 擬似逆行列の計算(応用)

※ 擬似逆行列を知らなくても計算できるように誘導がついています。

問8

正方行列でない係数行列 A からなる連立方程式 Ax=b の解 x は、x=(tAA)1tAb で計算できる。

このとき、連立方程式(123713)(xy)=(342)を計算しなさい。

順番に素直に計算していればOK。

[Step1] tAA の計算

tAA=(131273)(123713)=(11+331(1)1(2)+3(7)+(1)32173+3(1)2(2)7(7)+33)=(11262662)

[Step2] (tAA)1 の計算

(tAA)1=1|tAA|(62262611)=1682676(62262611)=16(62262611)

あとは地味に計算するだけx=(tAA)1tAb=16(62262611)(131273)(164)=16(62262611)(13+34122374+32)=16(62262611)(1328)=16(6213+261326(28)+11(28))=16(7830)=(135)=(xy)となるので、x=13, y=5 と解を求められる。

[余談]

今回計算した、(tAA)1tAA+bの括弧で表した部分の行列を、擬似逆行列と呼び A+ で表されます。

もし、擬似逆行列について詳しく知りたい人は、下の記事をご覧ください!
(1年生の線形代数の期末試験には基本的に出ないので、単位がとりたいだけであればスルーしてOKです)

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