スポンサードリンク
こんにちは、ももやまです。
今回は、制御数学・信号処理で出てくるz変換、逆z変換について、例題や練習問題などで計算できるように大量の練習問題を用意しております。
目次
スポンサードリンク
1.z変換の計算で暗記すべき公式
実際のz変換の計算では、定義式を使うことは基本ありませんが、z変換がどのように作られるのかについては、頭にいれておきましょう。
また、線形の法則は、\[
x_n = 4^n n^2 + 6n - 3
\]のような数列(信号)を分離する際に必須なので必ず頭に入れておきましょう。
さらに線形の法則は逆z変換でも使えることをお忘れなく。
(積分計算と同じく定数倍、足し算の分離は頻繁に行えると思っておきましょう。)
シフトの法則は、今回のようなz変換、逆z変換では使いませんが、差分方程式(漸化式)を解く際に出てくる \( x_{n+1} \), \( x_{n+2} \) などを解く際に必須です。
(1) 公式・法則1
(2) 公式・法則2
実際にz変換を導出する際に必要なのは下の3つだけです。
参考書には様々な公式が書かれているが、基本的にこの3つの公式から導出が可能なため、覚える必要はありません。
実際にz変換を計算する際には、
- \( x_n \) に多項式 \( n^a \) の形が含まれていれば、次数の数 \( a \) だけ微分の法則を適用
- \( x_n \) に指数関数 \( a^n \) の形が含まれていれば、1回指数倍の法則を適用
の2ステップで行います。
例えば、\( \mathcal{Z}[5^n n^3] \) であれば、
- \( \mathcal{Z}[1] \) に対して微分の公式を3回適用することで \( \mathcal{Z}[n^3] \) を作成
- \( \mathcal{Z}[n^3] \) に対して指数倍の公式を適用することで \( \mathcal{Z}[5^n n^3] \) を作成
で計算を行います。
(3) z変換表のダウンロード
実際にz変換を行う際には、ある数列 \( x_n \) と、\( x_n \) をZ変換した結果 \( X(z) \) が書かれているz変換表を用いてz変換を行います。z変換の公式集みたいなものですね。
z変換表が必要な人は下のボタンでダウンロードができます!!
スポンサードリンク
2.実際にz変換を計算してみよう!
では、さっそく5問ほどz変換を計算してみましょう。
次の(1)~(5)で与えられた数列 \( x_n \) のz変換 \( \mathcal{Z}[x_n] \) を計算しなさい。
(2-1~2-3の定理のみを使って計算をすること。)
(1) \[ x_n = n^3 + 3n^2 + 4n - 2 \]
(2) \[ x_n = 5^n n^3 \]
(3) \[ x_n = e^{2iTn} \]
(4) \[ x_n = \cos 2Tn \]
(5) \[ x_n = 3^n \cos 2Tn \]
(1) まずは、\( n^3 \) までのz変換を \( \mathcal{Z}[1] \) に微分の法則を3回適用することで導出する。
\[\begin{align}
\mathcal{Z}[n] & = \mathcal{Z}[n \cdot \textcolor{red}{1} ] \\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \mathcal{Z}[\textcolor{red}{1}]
\\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \frac{z}{z-1}
\\ & = - z \cdot \frac{1 \cdot (z-1) - z \cdot 1}{(z-1)^2}
\\ & = - z \cdot \frac{-1}{(z-1)^2}
\\ & = \frac{z}{(z-1)^2}
\end{align} \]
\[\begin{align}
\mathcal{Z}[n^2] & = \mathcal{Z}[n \cdot \textcolor{red}{n} ] \\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \mathcal{Z}[\textcolor{red}{n}]
\\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \frac{z}{(z-1)^2}
\\ & = - z \cdot \frac{(z-1)^2 - z \cdot 2(z-1)}{(z-1)^4}
\\ & = - z \cdot \frac{(z-1) - z \cdot 2}{(z-1)^3}
\\ & = -z \cdot \frac{-z-1}{(z-1)^3}
\\ & = \frac{z^2+z}{(z-1)^3}
\end{align} \]
\[\begin{align}
\mathcal{Z}[n^3] & = \mathcal{Z}[n \cdot \textcolor{red}{n^2} ] \\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \mathcal{Z}[\textcolor{red}{n^2}]
\\ & = - z \cdot \frac{d}{dz} \frac{z^2+z}{(z-1)^3}
\\ & = - z \cdot \frac{(2z+1)(z-1)^3 - (z^2+z) \cdot 3 (z-1)^2}{(z-1)^6}
\\ & = - z \cdot \frac{(2z+1)(z-1) - (z^2+z) \cdot 3}{(z-1)^4}
\\ & = -z \cdot \frac{2z^2 - 2z + z - 1 - 3z^2 - 3z}{(z-1)^4}
\\ & = -z \cdot \frac{-z^2 - 4z - 1}{(z-1)^4}
\\ & = \frac{z^3 + 4z^2 + z}{(z-1)^4}
\end{align} \]
となるので、\[ \begin{align*}
\mathcal{Z}[x_n] & = \mathcal{Z}[n^3] + 3 \mathcal{Z}[n^2] + 4 \mathcal{Z}[n] - 2 \mathcal{Z}[1]
\\ & = \frac{z^3 + 4z^2 + z}{(z-1)^4} + 3 \cdot \frac{z^2+z}{(z-1)^3} + 4 \cdot \frac{z}{(z-1)^2} - 2 \cdot \frac{z}{z-1}
\\ & = \frac{z^3 + 4z^2 + z + 3(z^2+z)(z-1)+4z(z-1)^2-2z(z-1)^3}{(z-1)^4}
\\ & = \frac{ -2z^4+14z^3-10z^2+4z }{(z-1)^4}
\end{align*} \]と計算できる。(展開はしなくてもOK!)
(2) (1) で求めた\( n^3 \) に指数倍の法則 \( \mathcal{Z}[a^n x_n] = X(a^{-1} z) \) を適用することで求められる。
ここで、\( n^3 \) のz変換は\[
X(z) = \frac{z^3 + 4z^2 + z}{(z-1)^4}
\]なので、\[ \begin{align}
\mathcal{Z}[\textcolor{red}{5}^n n^3] & = X(\textcolor{red}{5}^{-1} z)
\\ & = \frac{(5^{-1} z)^3 + 4 \cdot (5^{-1} z)^2 + 5^{-1}z}{( (5^{-1} z)-1)^4}
\\ & = \frac{5^{-4} (5z^3 + 4 \cdot 5^2 z^2 + 5^3 z )}{5^{-4} (z-5)^4}
\\ & = \frac{5z^3 + 100z^2 + 125z}{(z-5)^4}
\end{align} \]と計算できる。
(3) \( \mathcal{Z}[1] \) に指数倍の法則 \( \mathcal{Z}[a^n x_n] = X(a^{-1} z) \) を適用
\[
\begin{align*}
\mathcal{Z}[e^{2iTn}] & = X(e^{-2iT} z)
\\ & = \frac{e^{-2iT} z}{e^{-2iT} z-1}
\\ & = \frac{z}{z - e^{2iT}}
\end{align*} \]と計算できる。
(4) オイラーの公式\[
e^{2iTn} = \cos 2Tn + \sin 2Tn
\]より、(3)の計算結果の実部部分が \( x_n = \cos 2Tn \) のz変換となる。
ここで、\[
\frac{z}{z - e^{2iT}} = \frac{z}{z - \cos 2Tn - i \sin 2Tn}
\]とし、\(t = z - \cos 2T \) とすると、\[\begin{align*}
\frac{z}{z - e^{2iT}} & = \frac{z}{t - i \sin 2T}
\\ & = \frac{z(t + i \sin 2T)}{(t - i \sin 2T)(t + i \sin 2T)}
\\ & = \frac{zt + i \sin 2T z}{t^2 + \sin^2 2T}
\\ & = \frac{z(z - \cos 2T) + i \sin 2T z}{(z - \cos 2T)^2 + \sin^2 2T}
\\ & = \frac{z^2 - z \cos 2T + i \sin 2T z}{z^2 - 2 \cos 2T z + \cos^2 2T + \sin^2 2T}
\\ & = \frac{z^2 - z \cos 2T+ i \sin 2T z}{z^2 - 2 \cos 2T z + 1}
\\ & = \textcolor{deepslyblue}{ \frac{z^2 - z \cos 2T}{z^2 - 2 \cos 2T z + 1} } + i \frac{\sin 2T z}{z^2 - 2 \cos 2T z + 1}
\end{align*}\]
となるので、\[
\mathcal{Z}[\cos 2Tn] = \frac{z^2 - z \cos 2T}{z^2 - 2 \cos 2T z + 1}
\]と求められる。
(5) (4) の結果 \( X(z) \) に指数倍の法則 \( \mathcal{Z}[a^n x_n] = X(a^{-1} z) \) を適用
ここで、\( X(z) \) は\[
X(z) = \frac{z^2 - z \cos 2T}{z^2 - 2 \cos 2T z + 1}
\]なので、\[ \begin{align*}
\mathcal{Z}[\textcolor{red}{3}^n \cos 2Tn] & = X(\textcolor{red}{3}^{-1} z)
\\ & = \frac{(3^{-1} z)^2 - (3^{-1} z) \cos 2T}{(3^{-1} z)^2 - 2 \cos 2T (3^{-1} z)+ 1}
\\ & = \frac{3^{-2} ( z^2 - 3 \cdot z \cos 2T )}{3^{-2} ( z^2 - 3 \cdot 2 \cos 2T z+ 3^2 )}
\\ & = \frac{z^2 - 3 z \cos 2T }{z^2 - 6 \cos 2T z+ 9}
\end{align*} \]と計算できる。
スポンサードリンク
3.逆z変換と部分分数分解
(1) 逆z変換の基本
次に、z変換された関数 \( X(z) \) を元の数列 \( x_n \) に戻すための計算方法について見ていきましょう。変換するためには、下のようなz変換表にかかれている公式z変換の公式を逆にたどることで求めます。
逆z変換でよく出てくるz変換の4つを下に示す。
\[\begin{align*}
\mathcal{Z}[1] & = \frac{z}{z-1} = \frac{1}{ 1 - z^{-1} } \\
\mathcal{Z}[\textcolor{red}{a}^n] & = \frac{z}{z-\textcolor{red}{a}} = \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a}z^{-1} } \\
\mathcal{Z}[n] & = \frac{z}{(z-1)^2} = \frac{z^{-1}}{ (1 - z^{-1})^2 } \\
\mathcal{Z}[n \textcolor{red}{a}^n] & = \frac{\textcolor{red}{a}z}{(z-\textcolor{red}{a})^2} = \frac{\textcolor{red}{a}z^{-1}}{ (1 - \textcolor{red}{a}z^{-1})^2 }
\end{align*} \]
これらの公式を逆に適用することで、逆z変換を行うことができる。
\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{1 - z^{-1} } \right] = 1 \\
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n \\
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{z^{-1}}{ (1 - z^{-1})^2 } \right] = n \\
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{ \textcolor{red}{a} z^{-1} }{ (1 - \textcolor{red}{a}z^{-1})^2 } \right] = n \textcolor{red}{a}^n
\end{align*} \]
それでは、まずは例題で逆z変換のやり方を学びましょう。
次のz変換された関数 \( X(z) \) を逆z変換しなさい。\[
X(z) = \frac{3}{1 - 0.4 z^{-1} }
\]
z変換の公式\[
\mathcal{Z}[\textcolor{red}{a}^n] = \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a}z^{-1} }
\]を \( a = 0.4 \) とし、逆z変換\[
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n
\]として適用する。
よって、\[\begin{align*}
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3}{1 - 0.4 z^{-1} } \right] & = 3 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{1 - \textcolor{red}{0.4} z^{-1} } \right]
\\ & = 3 \cdot \textcolor{red}{0.4}^n
\end{align*}\]と逆z変換を求めることができる。
(2) 逆z変換と部分分数分解
制御数学や信号処理の試験で出てくる逆z変換は、例題1のように公式を当てはめるだけの単純なパターンが出てくることはなく、もう少しひねったパターンが出てくることが多いです。
この、少しひねったパターンで必ず使うことになるのが部分分数分解です。
試しに部分分数分解を使うひねったパターンの例題を見てみましょう。
次のz変換された関数 \( X(z) \) を逆z変換しなさい。\[
X(z) = \frac{5}{ 1 - 0.2 z^{-1} - 0.24 z^{-2} }
\]
問題文の形からして、単純に公式(z変換表)だけで解けそうにはない。
ここで、分母が\[
1 - 0.2 z^{-1} - 0.24 z^{-2} = (1 - 0.6 z^{-1})(1 + 0.4 z^{-1})
\]に因数分解できることから、以下の形のように部分分数分解を行うことを考える。\[
\frac{5}{ 1 - 0.2 z^{-1} - 0.24 z^{-2} } = \frac{a}{ 1 - 0.6 z^{-1} } + \frac{b}{ 1 + 0.4 z^{-1} }
\]
ここで、両辺に \( (1 - 0.6 z^{-1})(1 + 0.4 z^{-1}) \) を掛けると\[
5 = a (1+0.4 z^{-1}) + b (1 - 0.6 z^{-1})
\]となる。さらに、\( a \), \( b \) を求めるために、以下の2つの値を代入する。
- \( z = 0.6 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
5 & = a \left( 1 + \frac{0.4}{0.6} \right) + b \left( 1 - \frac{0.6}{0.6} \right)
\\ & = a \left( 1 + \frac{2}{3} \right)
\\ & = \frac{5}{3} a
\end{align*} \]より、\( a = 3 \) が求められる。 - \( z = -0.4 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
5 & = a \left( 1 + \frac{0.4}{-0.4} \right) + b \left( 1 - \frac{0.6}{-0.4} \right)
\\ & = b \left( 1 + \frac{3}{2} \right)
\\ & = \frac{5}{2} b
\end{align*} \]より、\( b = 2 \) が求められる。
よって、\[
\frac{5}{ 1 - 0.2 z^{-1} - 0.24 z^{-2} } = \frac{3}{ 1 - 0.6 z^{-1} } + \frac{2}{ 1 + 0.4 z^{-1} }
\]と部分分数分解できる。
さらに、部分分数分解後の式に逆z変換\[
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n
\]を適用する。
したがって逆z変換を、\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{5}{ 1 - 0.2 z^{-1} - 0.24 z^{-2} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3}{ 1 - 0.6 z^{-1} } \right] + \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{2}{ 1 + 0.4 z^{-1} } \right]
\\ = \ & 3 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{0.6} z^{-1} } \right] + 2 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{blue}{(-0.4)} z^{-1} } \right]
\\ = \ & 3 \cdot \textcolor{red}{0.6}^n + 2 \cdot \textcolor{blue}{(-0.4)}^n
\end{align*}\]と導出できる。
逆z変換時の部分分数分解のコツとしては、教科書によく書かれているヘビサイドの展開定理などを使わず、以下の手順で部分分数分解をすることをおすすめします。
- 両辺に元の分母を掛け、分数を消す
- 部分分数分解先の分子に相当する変数 \( a \), \( b \), … のうち、1つしか残らないような値を代入する
※ もし代入しても消えそうにない場合は、両辺を微分すると消えることがあり → 練習2 (3)
※ 部分分数分解にちょっと自信がない方はこちらの記事にて見直しましょう!
4.実際に逆z変換を計算してみよう!
では、実際に逆z変換の練習をしてみましょう!
次の(1)~(4)のz変換された関数 \( X(z) \) を逆z変換しなさい。
(1)\[
\frac{ 1-z^{-1} }{ 1 - 1.4 z^{-1} + 0.48 z^{-2} }
\]
(2)\[
\frac{ 0.3 z^{-1} }{ 1 + 1.1 z^{-1} + 0.28 z^{-2} }
\]
(3)\[
\frac{ 3 - 6z^{-1} }{ 1 - 6z^{-1} + 9 z^{-2} }
\]
(4)\[
\frac{ 8 - 14z^{-1} }{ (1-z^{-1})(1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) }
\]
(1) 分母が\[
1 - 1.4 z^{-1} + 0.48 z^{-2} = (1 - 0.6 z^{-1})(1 - 0.8 z^{-1})
\]に因数分解できることから、以下の形のように部分分数分解を行うことを考える。\[
\frac{1-z^{-1}}{ 1 - 1.4 z^{-1} + 0.48 z^{-2} } = \frac{a}{ 1 - 0.6 z^{-1} } + \frac{b}{ 1 - 0.8 z^{-1}}
\]
両辺に \( (1 - 0.6 z^{-1})(1 - 0.8 z^{-1}) \) を掛けると\[
1 - z^{-1} = a (1 - 0.8 z^{-1} ) + b ( 1 - 0.6 z^{-1} )
\]となる。さらに、\( a \), \( b \) を求めるために、以下の2つの値を代入する。
(i) \( z = 0.6 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
1 - \frac{1}{0.6} & = a \left( 1 - \frac{0.8}{0.6} \right) + b \left( 1 - \frac{0.6}{0.6} \right)
\\ & = a \left( 1 - \frac{4}{3} \right)
\\ & = - \frac{1}{3} a
\end{align*} \]となる。よって、\[
- \frac{2}{3} = - \frac{1}{3} a
\]という関係式が成り立つため、\( a = 2 \) となる。
(ii) \( z = 0.8 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
1 - \frac{1}{0.8} & = a \left( 1 - \frac{0.8}{0.8} \right) + b \left( 1 - \frac{0.6}{0.8} \right)
\\ & = b \left( 1 - \frac{3}{4} \right)
\\ & = \frac{1}{4} b
\end{align*} \]となる。よって、\[
- \frac{1}{4} = \frac{1}{4} b
\]という関係式が成り立つため、\( b = -1 \) となる。
よって、\[
\frac{1-z^{-1}}{ 1 - 1.4 z^{-1} + 0.48 z^{-2} } = \frac{2}{ 1 - 0.6 z^{-1} } - \frac{1}{ 1 - 0.8 z^{-1}}
\]
と部分分数分解できる。
さらに、部分分数分解後の式に逆z変換\[
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n
\]を適用する。
したがって逆z変換を、\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1-z^{-1}}{ 1 - 1.4 z^{-1} + 0.48 z^{-2} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{2}{ 1 - 0.6 z^{-1} } \right] - \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - 0.8 z^{-1}} \right]
\\ = \ & 2 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{0.6} z^{-1} } \right] - \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{blue}{0.8} z^{-1}} \right]
\\ = \ & 2 \cdot \textcolor{red}{0.6}^n - \textcolor{blue}{0.8}^n
\end{align*}\]と導出できる。
(2) 分母が\[
1 + 1.1 z^{-1} + 0.28 z^{-2} = (1 + 0.4 z^{-1})(1 + 0.7 z^{-1})
\]に因数分解できることから、以下の形のように部分分数分解を行うことを考える。\[
\frac{0.3 z^{-1}}{ 1 + 1.1 z^{-1} + 0.28 z^{-2} } = \frac{a}{ 1 + 0.4 z^{-1} } + \frac{b}{ 1 + 0.7 z^{-1} }
\]
両辺に \( (1 + 0.4 z^{-1})(1 + 0.7 z^{-1}) \) を掛けると\[
0.3 z^{-1} = a (1 + 0.7 z^{-1} ) + b ( 1 + 0.4 z^{-1} )
\]となる。さらに、\( a \), \( b \) を求めるために、以下の2つの値を代入する。
(ii) \( z = - 0.4 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
\frac{0.3}{-0.4} & = a \left( 1 + \frac{0.7}{-0.4} \right) + b \left( 1 + \frac{0.4}{-0.4} \right)
\\ & = a \left( 1 - \frac{7}{4} \right)
\\ & = - \frac{3}{4} a
\end{align*} \]となる。よって、\[
- \frac{3}{4} = - \frac{3}{4} a
\]という関係式が成り立つため、\( a = 1 \) となる。
(ii) \( z = -0.7 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
\frac{0.3}{-0.7} & = a \left( 1 + \frac{0.7}{-0.7} \right) + b \left( 1 + \frac{0.4}{-0.7} \right)
\\ & = b \left( 1 - \frac{4}{7} \right)
\\ & = \frac{3}{7} b
\end{align*} \]となる。よって、\[
- \frac{3}{7} = \frac{3}{7} b
\]という関係式が成り立つため、\( b = -1 \) となる。
よって、\[
\frac{0.3 z^{-1}}{ 1 + 1.1 z^{-1} + 0.28 z^{-2} } = \frac{1}{ 1 + 0.4 z^{-1} } - \frac{1}{ 1 + 0.7 z^{-1} }
\]
と部分分数分解できる。
さらに、部分分数分解後の式に逆z変換\[
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n
\]を適用する。
したがって逆z変換を、\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{0.3 z^{-1}}{ 1 + 1.1 z^{-1} + 0.28 z^{-2} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 + 0.4 z^{-1} } \right] - \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 + 0.7 z^{-1} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{(-0.4)}^n z^{-1} } \right] - \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{blue}{(-0.7)}^n z^{-1} } \right]
\\ = \ & \textcolor{red}{(-0.4)}^n - \textcolor{blue}{(-0.7)}^n
\end{align*}\]と導出できる。
(3) 分母が\[
1 - 6 z^{-1} + 9 z^{-2} = (1 - 3 z^{-1})^2
\]に因数分解できることから、以下の形のように部分分数分解を行うことを考える。\[
\frac{3-6z^{-1}}{ 1 - 6 z^{-1} + 9 z^{-2} } = \frac{a}{ 1 - 3 z^{-1} } + \frac{b}{ (1 - 3z^{-1} )^2 }
\]
両辺に \( (1 - 3 z^{-1})^2 \) を掛けると\[
3 - 6z^{-1} = a (1 - 3z^{-1}) + b
\]となる。
(i) \( z = 3 \) を代入。すると、\[\begin{align*}
3 - \frac{6}{3} & = a \left( 1 - \frac{3}{3} \right) + b
\\ & = b
\end{align*}\]となるので、\( 3 - 2 = b \) より、\( b = 1 \)
(ii) 両辺を \( z \) で微分する。すると、\[
6 z^{-2} = 3a z^{-2}
\]となる。よって、\( a = 2 \) となることがわかる。
よって、\[
\frac{3-6z^{-1}}{ 1 - 6 z^{-1} + 9 z^{-2} } = \frac{2}{ 1 - 3 z^{-1} } + \frac{1}{ (1 - 3 z^{-1} )^2}
\]
と部分分数分解できる。
さらに、部分分数分解後の式に逆z変換\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] = \textcolor{red}{a}^n \\
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{ \textcolor{red}{a} z^{-1} }{ (1 - \textcolor{red}{a}z^{-1})^2 } \right] = n \textcolor{red}{a}^n
\end{align*} \]を適用する。
ここで、\( n a^n \) の逆z変換の公式に対応させるため、\[\begin{align*}
& \frac{2}{ 1 - 3 z^{-1} } + \frac{1}{ (1 - 3 z^{-1} )^2}
\\ = \ & \frac{3}{ 1 - 3 z^{-1} } + \frac{1 - (1 - 3z^{-1}) }{ (1 - 3 z^{-1} )^2}
\\ = \ & \frac{3}{ 1 - 3 z^{-1} } + \frac{ 3z^{-1} }{ (1 - 3 z^{-1} )^2}
\end{align*}\]と変形を行う。
よって、\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3-6z^{-1}}{ 1 - 6 z^{-1} + 9 z^{-2} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3}{ 1 - 3 z^{-1} } \right] + \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{ 3z^{-1} }{ (1 - 3 z^{-1} )^2} \right]
\\ = \ & 3 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3}{ 1 - \textcolor{red}{3} z^{-1} } \right] + \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{ \textcolor{blue}{3} z^{-1} }{ (1 - \textcolor{blue}{3} z^{-1} )^2} \right]
\\ = \ & 3 \cdot \textcolor{red}{3}^n + n \cdot \textcolor{blue}{3}^n
\\ = \ & (3+n) 3^n
\end{align*}\]と計算できる。
(4) 最初から分母が因数分解されている。以下の形のように部分分数分解を行うことを考える。\[
\frac{ 8 - 14z^{-1} }{ (1-z^{-1})(1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) } = \frac{a}{ 1 - z^{-1} } + \frac{b}{ 1 + 2z^{-1} } + \frac{c}{1 - 3z^{-1}}
\]
両辺に \( (1-z^{-1})(1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) \) を掛けると\[
8 - 14z^{-1} = a (1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) + b (1-z^{-1})(1-3z^{-1}) + c (1-z^{-1})(1+2z^{-1})
\]となる。さらに、\( a \), \( b \), \( c \) を求めるために、以下の2つの値を代入する。
(i) \( z = 1 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
8 - \frac{14}{1} & = a \left( 1 + \frac{2}{1} \right) \left( 1 - \frac{3}{1} \right) + b \left( 1 - \frac{1}{1} \right) \left( 1 - \frac{3}{1} \right) + c \left( 1 - \frac{1}{1} \right) \left( 1 + \frac{2}{1} \right)
\\ & = a \cdot 3 \cdot (-2)
\\ & = -6a
\end{align*} \]となるので、\( -6 = -6a \) となり、\( a = 1 \)。
(ii) \( z = -2 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
8 - \frac{14}{-2} & = a \left( 1 + \frac{2}{-2} \right) \left( 1 - \frac{3}{-2} \right) + b \left( 1 - \frac{1}{-2} \right) \left( 1 - \frac{3}{-2} \right) + c \left( 1 - \frac{1}{-2} \right) \left( 1 + \frac{2}{-2} \right)
\\ & = b \cdot \frac{3}{2} \cdot \frac{5}{2}
\\ & = \frac{15}{4} b
\end{align*} \]となるので、\( 15 = \frac{15}{4} b \) となり、\( b = 4 \)。
(iii) \( z = 3 \) を代入する。すると、\[\begin{align*}
8 - \frac{14}{3} & = a \left( 1 + \frac{2}{3} \right) \left( 1 - \frac{3}{3} \right) + b \left( 1 - \frac{1}{3} \right) \left( 1 - \frac{3}{3} \right) + c \left( 1 - \frac{1}{3} \right) \left( 1 + \frac{2}{3} \right)
\\ & = c \cdot \frac{2}{3} \cdot \frac{5}{3}
\\ & = \frac{10}{9} c
\end{align*} \]となるので、\( \frac{10}{3} = \frac{10}{9} c \) となり、\( c = 3 \)。
よって、\[
\frac{ 8 - 14z^{-1} }{ (1-z^{-1})(1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) } = \frac{1}{ 1 - z^{-1} } + \frac{4}{ 1 + 2z^{-1} } + \frac{3}{1 - 3z^{-1}}
\]
と部分分数分解できる。
さらに、部分分数分解後の式に逆z変換\[\begin{align*}
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - z^{-1} } \right] & = 1 \\
\mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{a} z^{-1} } \right] & = \textcolor{red}{a}^n
\end{align*}\]を適用する。(※ \( a = 1 \) とすれば2番目の式のみで逆z変換可能)
したがって逆z変換を、\[\begin{align*}
& \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{ 8 - 14z^{-1} }{ (1-z^{-1})(1+2z^{-1})(1-3z^{-1}) } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - z^{-1} } \right] + \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{4}{ 1 + 2z^{-1} } \right] + \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{3}{ 1 - 3z^{-1} } \right]
\\ = \ & \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - z^{-1} } \right] + 4 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{red}{(-2)}^n z^{-1} } \right] + 3 \cdot \mathcal{Z}^{-1} \left[ \frac{1}{ 1 - \textcolor{blue}{3} z^{-1} } \right]
\\ = \ & 1 + 4\cdot \textcolor{red}{(-2)}^n + 3 \cdot \textcolor{blue}{3}^n
\end{align*}\]と導出できる。
5. さいごに
今回は、実際にz変換や逆z変換について例題や練習問題を解く実践的な内容でした。
次回からは、いよいよz変換や逆z変換を使って差分方程式(漸化式)を解く方法について説明していきます!
関連広告・スポンサードリンク