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--- お詫び --- [2023/6/12追記]
すべての例題・練習問題の途中過程において、本来は
※ この誤りにつきましては、すべて修正し、正しい途中式に直しております。
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こんにちは、ももやまです。
前回(Part4)は複素数のマクローリン展開・テイラー展開について説明しましたね。
今回はテイラー展開をさらに拡張した複素関数ならではの展開方法としてローラン展開についてまとめていきたいと思います。
さらにローラン展開を用いた特異点の分類法についてもまとめています。
前回の記事はこちら!
ローラン展開を行うためにはマクローリン展開・テイラー展開の知識が必須なのでまだマクローリン展開・テイラー展開が理解できていない人はこちらの記事で復習しましょう。
目次 [hide]
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1.ローラン展開
(1) ローラン展開とは
テイラー展開が可能な正則な点まわりでの級数展開に加えて、正則ではない点(特異点)まわりでも級数展開をできるようにしたものをローラン展開と呼びます。
テイラー展開可能な領域範囲
ローラン展開可能な領域範囲
緑色の領域がテイラー展開・ローラン展開ともに可能な領域、黄色や紫色の領域がローラン展開のみ可能な領域を表します。
ただし、ローラン展開の場合でも領域内は正則である必要があります。
(領域内に特異点が含まれているなどで正則でない場合はローラン展開できません。)
テイラー展開:正則な点のまわりに限定した展開
ローラン展開:正則な点に限定しない展開
(ローラン展開は正則ではない点(特異点)まわりでも展開可能)
ローラン展開の公式を見てみましょう。
テイラー展開の部分に加えて負のべき乗の項
特異部(主要部)は正則ではない点を中心に展開した場合や、正則な点を中心に展開した場合でもテイラー展開では求められない特異点の外側の領域の点に対してローラン展開を行うと発生します。
逆にテイラー展開可能な領域(緑色部分)でローラン展開を行った場合は、主要部のすべての項が消えてテイラー展開とローラン展開の答えが同じになります。
(2) ローラン展開の求め方
テイラー展開を求めるときには、実際に複素関数を何回か微分していくことで求めましたね。
しかし、ローラン展開では正則ではない点のまわりでも展開を行うので微分でローラン展開を求めることができません。
その代わり、
では1問実際にローラン展開を行ってみましょう。
例題1
つぎの複素関数
解説1
(今回の場合は
(3) 場合分けが必要なローラン展開
下の図のように展開の中心部分以外に何個かの特異点がある場合を考えます。
この場合、特異点の内側と外側でローラン展開が異なるので、それぞれの特異点の前後で場合分けを行う必要があります。
(例えば
また、領域内は正則である必要があるので、特異点をローラン展開の領域に含むことはできないので注意しましょう。
では1問実際に場合分けが必要なローラン展開を行ってみましょう。
例題2
つぎの複素関数
解説2
特異点は
なので、
(
(1)
(2)
よって、
(1), (2) よりローラン展開は
[別解]
部分分数分解を使って分解する方法もあり
部分分数分解の方法を忘れてしまった人や不安な人はこちらから復習しましょう。
(1)
(2)
別解で解くと見た目の答えが別解ではない解き方と微妙に異なりますが、両方とも同じ答えなのでどちらで答えてもOKです。
(
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2.特異点
(1) 特異点とは(復習)
複素関数
(2) 孤立特異点と集積特異点
特異点
一方特異点のまわりにどんなに狭い範囲を考えても特異点が存在してしまうような特異点のことを集積特異点と呼びます。
集積特異点の例としては
なので
(3) 孤立特異点の3つの分類
さらに孤立特異点はローラン展開の特異部(負のべき乗部分)によって極・除去可能な特異点・真性特異点の3つに分類されます。
(1) 極
特異点
さらに、極は特異部(負のべき乗)がどこまで続いているかによって極の位数もセットで表すこともあります。
例えば、上のようなローラン展開だった場合、
(基本的に分母の次数が最大になっているところが極の位数の基準となります。)
さらにもう1つ例をみてみましょう。
特異部は
なので、下のように負のべき乗が
ちなみに
(2) 除去可能な特異点
たとえば複素関数
特異点を持ちそうに見えるのにローラン展開の特異部(負のべき乗)が存在しませんね。
このように(分母が0になるなど)一見特異点そうに見える点でもローラン展開を行うと特異部が消えるような特異点のことを除去可能な特異点と呼びます。
(3) 真性特異点
たとえば複素関数
このようにローラン展開の特異部が無限に続くような特異点のことを真性特異点と呼びます。
特異点のまとめを下に記します。
特異点は孤立特異点・集積特異点の2つに分類できる。
孤立特異点:まわりに他の特異点がないような特異点
集積特異点:どんなに狭いまわりを考えても他の特異点が存在するような特異点
さらに孤立特異点はローラン展開の負のべき乗部分(特異部)によって3つに分けることができる
除去可能な特異点:特異部が存在しないような特異点
真性特異点:特異部が無限に続くような特異点
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3.留数定理
ローラン展開を用いることで留数を求めることができます。
留数とは、特異点からすぐ近くの正則な領域で展開したローラン展開を行ったときに出てくる
複素関数
留数を求めることで不定積分を計算することなく周積分を行ったり、Part6で説明する実関数の積分を複素解析の力を借りて計算できるようになります。
ですが、毎回留数を求めるためにローラン展開するのはかなりめんどくさいので実際に留数を求めるときには簡単に留数を求めるための定理として留数定理を使うことが多いです。
留数定理の説明、および複素解析の力を借りて実関数の積分を行う方法などについてはこちらの記事をご覧ください。
4.練習問題
では2問ほど練習してみましょう。
どちらも場合分けが必要な問題となっております。
練習1
つぎの複素関数
練習2
つぎの複素関数
5.練習問題の答え
解答1
特異点は
(1)
よって、
ここで、
留数は特異点にごく近い(距離0付近)のローラン展開の
よって留数は
(2)
よって、
ここで、
(1), (2) よりローラン展開は
[別解]
部分分数分解を行い、
(1)
(2)
解答2
さらに
特異点は
(1)
よって、
ここで、
また、留数は特異点にごく近い(距離0付近)のローラン展開の
よって留数は 2 となる。
(2)
よって、
ここで、
[別解 部分分数分解を用いた解き方]
部分分数分解を行い、
(1)
(よって留数は2となる。)
(2)
6.さいごに
今回はテイラー展開の拡張バージョンのローラン展開についてまとめました。
ローラン展開も見た目は複雑そうな形をしていますが、実際やると大したことがないなと思っていただければありがたいです。
次回は留数を複素関数を積分する方法、および実関数の積分に応用する方法についてまとめていきたいと思います。
では、また次回。
Part6はこちら!
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