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こんにちは、ももやまです。
今回は基底を正規直交基底にするグラムシュミットの直交化法についてをメインにまとめました!
高校までに習ったベクトルの知識、例えば「内積」などは覚えていますか?
グラムシュミットの直交化法では、内積を求める必要があるため、今回はベクトルの基礎についてもまとめているので忘れてしまったひとは復習部分を見てぜひ復習しましょう。
前回の線形代数の記事(第09羽)はこちら!
部分空間の和空間、交空間の求め方についてです!
目次
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1.ベクトルの大きさ・内積・直交条件
実際に直交化を行う前に、直交化を行うために必要なベクトルの「大きさ」・「内積」「ベクトルの直交条件」についてまとめたいと思います(多くの人が復習になるかと思います……)。
高校では、2次元、3次元までのベクトルの「大きさ」や「内積」などを求めていましたが、4次元以上のときも同様に2次元、3次元のベクトルの「大きさ」・「内積」を求めることができます。
(1) ベクトルの大きさ
ベクトルの大きさは、原点からベクトルの終点までの距離と同じです。例えば、3次元ベクトル\[ \vec{a} = \left( \begin{array}{ccc} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \end{array} \right) \]の場合\[
|\vec{a}| = \sqrt{ a_{1}^{2} + a_{2}^{2} + a_{3}^{2} }
\]と求められます。
同様に \( n \) 次元ベクトルの場合のベクトルの大きさの求め方は、以下のようになります。
\( n \) 次元のベクトル \[ \vec{a} = \left( \begin{array}{ccc} a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) \]の大きさ(\( |\vec{a}| \) もしくは \( \|\vec{a}\| \) )は、\[
|\vec{a}| = \sqrt{ a_{1}^{2} + a_{2}^{2} + \cdots + a_{n}^{2} }
\]で表せる。
大きさが1のベクトルのことを単位ベクトルと呼びます。
(2) ベクトルの内積
ベクトルの内積も、次元に関わらず2次元、3次元と同様に求めることができます。
ベクトルの内積は次の2つの方法で求めることができます。
忘れてしまった人は思い出しましょう。
ベクトル \[ \vec{a} = \left( \begin{array}{ccc} a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_n \end{array} \right) \ \ \ \vec{b} = \left( \begin{array}{ccc} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_n \end{array} \right) \]とし、\( \vec{a} \), \( \vec{b} \) がなす角を \( \theta \) とすると、内積 \( \vec{a} \cdot \vec{b} \) は、\[
\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta \\ ( 0^\circ \leqq \theta \leqq 180^\circ , \ \ \vec{a} \not = \vec{0} , \vec{b} \not = \vec{0} )
\]もしくは\[
\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2 + \cdots + a_n b_n = \sum_{i=1}^n a_i b_i \\
\vec{a} \cdot \vec{b} = {}^t\!\vec{a} \ \vec{b}
\]となる。
(ベクトル \( \vec{a} \) を転置させることで行列の積の計算と同じように内積を計算できる)
ベクトルの内積には、下のような法則が成り立ちます。
ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \), \( \vec{c} \) および行列 \( A \) に対し、
(1) 順番を入れ替えても内積の値は変わらない\[ \vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{a} \]
(2) 内積の分解公式\[ \vec{a} \cdot \left( \vec{b} + \vec{c} \right) = \vec{a} \cdot \vec{b} + \vec{a} + \vec{c} \]
(3) 定数倍は分離できる\[ k \vec{a} \cdot \vec{b} = k \left( \vec{a} \cdot \vec{b} \right) \]
(4) 行列 \( A \) が含まれる内積についての定理*1\[
A \vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{a} \cdot {}^t\!A \vec{b}
\]が成立する。
(3) ベクトルの直交条件
2つのベクトルが直交するというのはベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) がなす角が90度になることを意味します。
つまり、 \[
\vec{a} \cdot \vec{b} = | \vec{a} | | \vec{b} | \cos 90^\circ = 0
\]となるとき、ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) は直交します。
\( \vec{0} \) でないベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) が\[
\vec{a} \cdot \vec{b} = 0
\]を満たすとき、2つのベクトルは直交する。
(4) ベクトルの正規化
ベクトルの向きをそのままにして、大きさを1(単位ベクトル)にする処理のことを正規化といいます。
ベクトル \( \vec{a} \) を正規化したベクトルを \( \vec{u} \) は、\[
\vec{u} = \frac{ \vec{a} }{ | \vec{a} | }
\]で求められる。
例題1
4次元ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \), \( \vec{c} \) が、\[
\vec{a} = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) \ \ \ \vec{b} = \left( \begin{array}{ccc} 8 \\ 3 \\ 8 \\ 5 \end{array} \right) \ \ \ \vec{c} = \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ x \\ 3 \\ 4 \end{array} \right) \]で与えられている。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) のそれぞれの大きさ \( |\vec{a} | \), \( |\vec{b}| \) を求めなさい。
(2) \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) の内積 \( \vec{a} \cdot \vec{b} \) を求めなさい。
(3) \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) のなす角度 \( \theta \) を求めなさい。
(4) ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{b} \) を正規化したベクトル \( |\vec{u} | \),\( |\vec{v} | \) を求めなさい。
(5) ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{c} \) が直交するような \( x \) の値を求めなさい。
解説1
(1) \[ |\vec{a} | = \sqrt{ 2^2 + 1^2 + 1^2 + 0^2} = \sqrt{6} \\ |\vec{b} | = \sqrt{ 8^2 + 3^2 + 8^2 + 5^2} = \sqrt{81 \cdot 2} = 9 \sqrt{2}\]
(2) \[\begin{align*}
\vec{a} \cdot \vec{b} & = {}^t\!\vec{a} \vec{b} \\ & = \left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 & 1 & 0 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 8 \\ 3 \\ 8 \\ 5 \end{array} \right)
\\ & = 2 \cdot 8 + 1 \cdot 3 + 1 \cdot 8 + 0 \cdot 5 \\ & = 27
\end{align*} \]
(3) \[\begin{align*} \vec{a} \cdot \vec{b} & = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta
\\ & = \sqrt{6} \cdot 9 \sqrt{2} \cos \theta
\\ & = 18 \sqrt{3} \cos \theta = 27
\end{align*} \]が成立するので、\[
\cos \theta = \frac{27}{18 \sqrt{3} } = \frac{ \sqrt{3} }{2} \]となる。
よって、\[
\theta = 30^\circ \left( = \frac{ \pi }{6} \right)
\]となる。
(4)
\( \vec{a} \), \( \vec{b} \) の向きを変えずに大きさを1とする変換を行う。\[
\vec{u} = \frac{ \vec{a} }{ | \vec{a} | } = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) \\
\vec{v} = \frac{ \vec{v} }{ | \vec{v} | } = \frac{1}{ 9 \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 8 \\ 3 \\ 8 \\ 5 \end{array} \right)
\]
(5)
ベクトル \( \vec{a} \), \( \vec{c} \) の内積 \( \vec{a} \cdot \vec{c} \) が0になるときの \( x \) の値を調べればよい。\[\begin{align*}
\vec{a} \cdot \vec{c} & = {}^t\!\vec{a} \vec{c} \\ & = \left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 & 1 & 0 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ x \\ 3 \\ 4 \end{array} \right)
\\ & = 2 \cdot (-2) + 1 \cdot x + 1 \cdot 3 + 0 \cdot 4
\\ & = x - 1
\\ & = 0
\end{align*} \]が成立する \( x \) は、\( x = 1 \) のときである。
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2.正規直交基底
基底の中に含まれているベクトルが下にある2つの性質を満たすとき、正規直交基底と呼ばれます。
基底に含まれるベクトル \( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \), …, \( \vec{a_n} \) が
- 大きさがすべて1(\( | \vec{a_i} | = 1 \))
- 基底内の互いのベクトルがすべて直交(\( \vec{a_i} \cdot \vec{a_j} = 0 \))
する基底を正規直交基底と呼ぶ。
例えば、\( n \) 次元標準基底 \( \vec{e_1} \), \( \vec{e_2} \), … ,\( \vec{e_n} \) 内のベクトルは、
- どのベクトルの大きさも1
\[ | \vec{e_i} | = 1 \] - 標準基底内のどの2つのベクトルを取っても内積が0
\[\vec{e_i} \cdot \vec{e_j} = 0 \]
なので、標準基底は正規直交基底です。
例題2
つぎの \( \mathbb{R}^3 \) のベクトル\[
\left\{ \
\frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ \sqrt{3} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -1 \end{array} \right) \
\right\}
\]が正規直交基底になることを確認しなさい。
解答2
基底に含まれる3つのベクトルを\[
\vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right) \ \ \ \vec{u_2} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) \ \ \ \vec{u_3} = \frac{1}{ \sqrt{3} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -1 \end{array} \right) \]とする。
(1) 3つのベクトルの大きさがすべて1であることの確認\[
\vec{u_1} = \frac{1^2}{6} + \frac{1^2}{6} + \frac{2^2}{6} = 1\\
\vec{u_2} = \frac{1^2}{2} + \frac{(-1)^2}{2} = 1 \\
\vec{u_3} = \frac{1^2}{3} + \frac{1^2}{3} + \frac{(-1)^2}{3} = 1
\]より(1)成立。
(2) 3つのベクトルが互いに直交することの確認\[
\vec{u_1} \cdot \vec{u_2} = \frac{1}{ \sqrt{12} } \left( 1 - 1 + 0 \right) = 0 \\
\vec{u_1} \cdot \vec{u_3} = \frac{1}{ \sqrt{18} } \left( 1 + 1 - 2 \right) = 0 \\
\vec{u_2} \cdot \vec{u_3} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( 1 - 1 + 0 \right) = 0
\]より、(2)成立。
(1),(2) より題意の基底は正規直交基底である。
★補足★
直交することを示すときは内積が0であることを示せばいいので分母の数値を考える必要はない。つまり、\[
\vec{u_1} \cdot \vec{u_2} = 1 - 1 + 0 = 0 \\
\vec{u_1} \cdot \vec{u_3} = 1 + 1 - 2 = 0 \\
\vec{u_2} \cdot \vec{u_3} = 1 - 1 + 0 = 0
\]と計算すればOK。
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3.グラムシュミットの直交化法
ではいよいよベクトルを正規直交変換に変換する公式を紹介しましょう。
\( n \) 本の1次独立なベクトル \( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \), …, \( \vec{a_n} \) から、\[
\vec{u_1} = \frac{ 1 }{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} \\
\vec{b_2} = \vec{a_2} -\left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}, \ \ \vec{u_2} = \frac{ 1 }{ |\vec{b_2}| } \vec{b_2} \\
\vec{b_3} = \vec{a_3} -\left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_1} \right)\vec{u_1} -\left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_2} \right) \vec{u_2}, \ \ \vec{u_3} = \frac{ 1 }{ |\vec{b_3}| } \vec{b_3} \\ \vdots \\
\begin{align*}
\vec{b_n} & = \vec{a_n} - \left( \vec{a_n} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1} -\left( \vec{a_n} \cdot \vec{u_2} \right) \vec{u_2} - \cdots - \left( \vec{a_n} \cdot \vec{u_{n-1}} \right) \vec{u_{n-1}}
\\ & = \vec{a_n} - \sum_{i=1}^{n-1} \left( \vec{a_n} \cdot \vec{u_i} \right) \vec{u_i}
\end{align*}
\\ \vec{u_n} = \frac{ 1 }{ |\vec{b_n}| } \vec{b_n}
\]とすると正規直交基底\[
\left\{ \
\vec{u_1}, \vec{u_2}, \cdots, \vec{u_n} \
\right\}
\]を作成することができる。
直交化するようなベクトル \( \vec{b_i} \) をもとめ、長さを1に正規化して \( \vec{u_i} \) を求める流れとなっています。
例題3
\( \mathbb{R}^3 \) の基底\[
\vec{a_1} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_2} = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ -1 \\ -2 \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_3} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ -2 \end{array} \right)
\]を正規直交化し、正規直交基底をつくりなさい。
解答3
\( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \), \( \vec{a_3} \) を正規直交化したベクトルを \( \vec{u_1} \), \( \vec{u_2} \), \( \vec{u_3} \) とする。\[
\vec{u_1} = \frac{1}{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\]となる。
\[
\vec{a_2} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( 2 + 1 \right) = \frac{3}{ \sqrt{2} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_2} & = \vec{a_2} - \left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ -1 \\ -2 \end{array} \right) - \frac{3}{ \sqrt{2} } \cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 4 \\ -2 \\ -4 \end{array} \right) - \frac{3}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。
よって、\[ \vec{u_2} = \frac{1}{ | \vec{b_2} | } \vec{b_2} = \frac{1}{ 3 \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right) \]となる。
(実は \( | \vec{b_2} | \) の値は求める必要はなく、\( \vec{b_2} \) の分数部分を無視した\[
\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right)
\]の正規化を考えればあっという間に正規化ができる。)
\[
\vec{a_3} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( 1 + 1 \right) = \frac{2}{ \sqrt{2} }
\vec{a_3} \cdot \vec{u_2} = \frac{1}{ 3 \sqrt{2} } \left( 1 - 1 + 8 \right) = \frac{8}{3 \sqrt{2} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_3} & = \vec{a_3} - \left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1} - \left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_2} \right) \vec{u_2}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ -2 \end{array} \right) - \frac{1}{ \sqrt{2} } \cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
- \frac{8}{ 3 \sqrt{2} } \cdot \frac{1}{ 3 \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right)
\\ & =
\frac{18}{18} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ -2 \end{array} \right)
- \frac{18}{18} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
- \frac{8}{18} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{18} \left( \begin{array}{ccc} -8 \\ -8 \\ -4 \end{array} \right)
\\ & = \frac{2}{9} \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ -2 \\ -1 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。
よって、\[ \vec{u_3} = \frac{1}{ | \vec{b_3} | } \vec{b_3} = \frac{1}{ 3 } \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ -2 \\ -1 \end{array} \right) \]となる。
(こちらも \( | \vec{b_3} | \) の値は求める必要はなく、\( \vec{b_3} \) の分数部分を無視した\[
\left( \begin{array}{ccc} -2 \\ -2 \\ -1 \end{array} \right)
\]の正規化を考えればあっという間に正規化ができる。)
※導出後に\[\vec{u_1} \cdot \vec{u_3} = 0 \\ \vec{u_2} \cdot \vec{u_3} = 0 \]を検算すること。
よって、正規直交基底は\[
\left\{ \ \vec{u_1}, \vec{u_2}, \vec{u_3} \right\} \\
\left\{ \
\frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ 3 \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ 3 } \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ -2 \\ -1 \end{array} \right) \
\right\}
\]となる。
(有理化して\[
\left\{ \
\frac{\sqrt{2}}{ 2 } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) , \
\frac{\sqrt{2}}{ 6 } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -4 \end{array} \right) , \
-\frac{1}{ 3 } \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 2 \\ 1 \end{array} \right) \
\right\}
\]でももちろんOK。でもあまり有理化しないことがおおい。)
4.直交行列
\( n \) 次元ベクトルから作る正規直交基底 \( \vec{u_1} \), \( \vec{u_2} \), …, \( \vec{u_n} \) を並べることで直交行列 \( U \) を \[
U = \left( \vec{u_1}, \vec{u_2}, \cdots, \vec{u_n} \right)
\]のように作ることができます。
直交行列の定義を下に示します。
正方行列 \( U \) が\[ {}^t\!U U = E \\ {}^t\!U = U^{-1} \]を満たすとき、直交行列という。
直交行列には、以下のような性質があります。
直交行列 \( U \) に成り立つ性質
- \( {}^t\!U U = U {}^t\!U = E \)
直交行列とその転置の積(逆もOK)は単位行列 - \( {}^t\!U = U^{-1} \)
直交行列の転置は逆行列 - \( |U| = \pm 1 \)
直交行列の行列式は1か-1
(行列式が±1だからといって直交行列ではないところに注意) - \( | U \vec{x}| = | \vec{x} | \)
直交行列を用いた変換でもベクトルの大きさはそのまま - \( U \vec{x} \cdot U \vec{y} = \vec{x} \cdot \vec{y} \)
直交行列を用いた変換でもベクトルの内積はそのまま - 行列 \( P \) のそれぞれの列(1〜i列)を列ベクトル \( \vec{u_i} \) とすると、列ベクトルは互いに直交し、大きさは1となる。
(正規直交基底から直交行列が作れるので当たり前かも……)
例題4
例題3で求めた正規直交基底を並べた行列 \( U \) \[ \begin{align*}
U & = \left( \vec{u_1}, \vec{u_2}, \vec{u_3} \right)
\\ & = \frac{1}{ 6 } \left( \begin{array}{ccc} 3 \sqrt{2} & \sqrt{2} & -4 \\ -3 \sqrt{2} & \sqrt{2} & -4 \\ 0 & -4 \sqrt{2} & -2 \end{array} \right)
\end{align*} \]が直交行列になることを確認しなさい。
解説4
\( \( U {}^t\!U \) を計算する。\[ \begin{align*}
U {}^t\!U = &
\frac{1}{ 36 } \left( \begin{array}{ccc} 3 \sqrt{2} & \sqrt{2} & -4 \\ -3 \sqrt{2} & \sqrt{2} & -4 \\ 0 & -4 \sqrt{2} & -2 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 3 \sqrt{2} & -3 \sqrt{2} & 0 \\ \sqrt{2} & \sqrt{2} & -4 \sqrt{2} \\ -4 & -4 & -2 \end{array} \right)
\\ = & \frac{1}{36} \left( \begin{array}{ccc} 36 & 0 & 0 \\ 0 & 36 & 0 \\ 0 & 0 & 36 \end{array} \right)
\\ = & \left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right) = E
\end{align*} \ \)となり、直交行列であることを確認した。
5.練習問題
では、2問ほど直交化の練習をしてみましょう。
練習1
\( \mathbb{R}^2 \) の基底\[
\vec{a_1} = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_2} = \left( \begin{array}{ccc} -4 \\ 3 \end{array} \right)
\]を正規直交化し、正規直交基底をつくりなさい。
解答1
\( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \) を正規直交化したベクトルを \( \vec{u_1} \), \( \vec{u_2} \) とする。\[
\vec{u_1} = \frac{1}{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} = \frac{1}{ \sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。
ここで、\[
\vec{a_2} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{5} } ( -8 + 3 ) = - \frac{5}{ \sqrt{5} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_2} & = \vec{a_2} - \left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} -4 \\ 3 \end{array} \right) - \frac{-5}{ \sqrt{5} } \cdot \frac{1}{\sqrt{5}} \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right)
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} -4 \\ 3 \end{array} \right) + \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right)
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ 4 \end{array} \right)
\end{align*}
\]となる。
\( \vec{b_2} \) を正規化すると、\[\begin{align*}
\vec{u_2} & = \frac{1}{ |\vec{b_2}| } \vec{b_2}
\\ & = \frac{1}{2 \sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} -2 \\ 4 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{\sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} -1 \\ 2 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。
(必ず \( \vec{u_1} \cdot \vec{u_2} = 0 \) のチェック!!)
よって、正規直交基底は\[
\left\{ \vec{u_1}, \vec{u_2} \right\} \\
\left\{
\frac{1}{ \sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right) , \
\frac{1}{\sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} -1 \\ 2 \end{array} \right)
\right\}
\]となる。
練習2
\( \mathbb{R}^3 \) の基底\[
\vec{a_1} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_2} = \left( \begin{array}{ccc} 0 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_3} = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right)
\]を正規直交化し、正規直交基底をつくりなさい。
解答2
\( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \), \( \vec{a_3} \) を正規直交化したベクトルを \( \vec{u_1} \), \( \vec{u_2} \), \( \vec{u_3} \) とする。\[
\vec{u_1} = \frac{1}{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\]となる。
\[
\vec{a_2} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } = - \frac{1}{ \sqrt{2} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_2} & = \vec{a_2} - \left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 0 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right) - \frac{-1}{ \sqrt{2} }\cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 0 \\ 2 \\ 2 \end{array} \right) + \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。
よって、\[ \vec{u_2} = \frac{1}{ | \vec{b_2} | } \vec{b_2} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right) \]となる。
( \( \vec{u_1} \cdot \vec{u_2} = 0 \) の確認忘れずに)
\[
\vec{a_3} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( 2 - 1 \right) = \frac{1}{ \sqrt{2} }
\vec{a_3} \cdot \vec{u_2} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( 2 + 1 \right) = \frac{3}{ \sqrt{6} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_3} & = \vec{a_3} - \left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1} - \left( \vec{a_3} \cdot \vec{u_2} \right) \vec{u_2}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right) - \frac{1}{ \sqrt{2} } \cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
- \frac{3}{ \sqrt{6} } \cdot \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right)
\\ & =
\frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 4 \\ 2 \\ 0 \end{array} \right)
- \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right)
- \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 2 \\ -2 \end{array} \right)
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -1 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。
よって、\[ \vec{u_3} = \frac{1}{ | \vec{b_3} | } \vec{b_3} = \frac{1}{ 3 } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -1 \end{array} \right) \]となる。
※導出後に\[\vec{u_1} \cdot \vec{u_3} = 0 \\ \vec{u_2} \cdot \vec{u_3} = 0 \]を検算お忘れなく!
よって、正規直交基底は\[
\left\{ \ \vec{u_1}, \vec{u_2}, \vec{u_3} \right\} \\
\left\{ \
\frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 2 \end{array} \right) , \
\frac{1}{ \sqrt{3} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -1 \end{array} \right) \
\right\}
\]となる。
6.さいごに
今回は基底を正規直交基底に変換する方法としてグラムシュミットの直交化法を紹介しました。
ベクトルの基礎である「大きさ」・「内積」などはもし忘れていたらすぐ思い出しましょう。
グラムシュミットの直交化法は、もう少し先で習う直交行列を用いた対角化で大いに役にたつ方法です。
直交化は最初で間違えてしまうと後ろのベクトルも連動して間違えてしまうので、直交化をする際には1つベクトルを求めたら必ず検算する癖をつけましょう。
次回からは線形代数における写像についてまとめていきたいと思います。
*1:\begin{align*}
\left(A \vec{p_1} \right) \cdot \vec{p_2} & = {}^t\! \left(A \vec{p_1} \right) \vec{p_2}
\\ & = {}^t\! \vec{p_1} {}^t\!A \vec{p_2}
\\ & = \vec{p_1} \cdot {}^t\!A \vec{p_2}
\end{align*}で示せる。
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