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こんにちは、ももやまです。
今回は、線形代数の中でもかなりの難易度を誇り、期末試験や院試などで出題されるジョルダン標準形がどんなものなのかを簡単に説明し、3次ジョルダン標準形までの求め方を例題や練習問題を用意し、(たぶん)わかりやすくまとめています。
※注意
ジョルダン標準形の求め方が知りたい方は、項目3以降をご覧ください。
前回の記事「うさぎでもわかる線形代数 第21羽」はこちら↓
目次 [hide]
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1.ジョルダン標準形とは
行列の中には対角化ができないものもありました。例えば、
しかし、対角化できない行列でもできる限り対角行列に近い形にすることはできます。この形のことをジョルダン標準形と呼ばれます。
ジョルダン標準形は、ジョルダンブロック(下で説明します)を対角線上に並べた行列を表します。
ジョルダンブロック(ジョルダン細胞)
ジョルダンブロックは下のように対角成分に同じ数(固有値)を並べ、対角成分の1つ上が1となる行列のことを表し、
ジョルダンブロックは、対角成分に並んでいる数(固有値)を
ジョルダン標準形とジョルダンブロック
ジョルダン標準形は下のようにジョルダンブロックを対角線上に並べ、残りの成分が0であるような行列を表します。
ジョルダン標準形を記号で表現する際には、どんな
例えば、図の一番左の行列は、
行列が対角化できる場合、ジョルダン標準形はすべてサイズ1のジョルダンブロック
対角化はジョルダン標準形の特殊なパターンなのです。
(もし対角化がまだわからない人は早急にこちらの記事で復習しましょう!)
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2.2次・3次のジョルダン標準形とジョルダンブロック
2次平方行列、3次平方行列の場合のジョルダン標準形とジョルダンブロックの組み合わせを下に記しておきます。
2次正方行列の場合
3次正方行列の場合
ジョルダン標準形が対角行列
対角化できない場合
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3.ジョルダン標準形の求め方(2次)
ではまずは2次正方行列のジョルダン標準形を求める方法を例題を使って説明していきましょう。
例題1
行列
解説1
(1)
Step1:固有値を求める
固有値を
Step2:固有ベクトルを求める
固有値が3のときの固有ベクトルは、
ここまでは通常の対角化と全く同じ流れです。
Step3:広義固有ベクトルを求める
このままでは固有ベクトルが1本足りないため、ジョルダン標準形がつくれませんね。
そこで、
※通常の固有ベクトルも広義固有ベクトルの中に含まれるので「広義固有ベクトルを求めなさい」という問題が出た際には通常の固有ベクトルを答えに入れ忘れないように注意しましょう。
固有値3に対する広義固有ベクトル
(実はここは任意定数とおかなくても
よって広義固有ベクトル
Step4:ジョルダン標準形を求める
よって、
ここで、
(ジョルダン標準形の検算も対角化と同じように
ジョルダンブロック:
広義固有ベクトルと広義固有空間
広義固有ベクトルも固有ベクトルと同じようにベクトル空間を用いて表すことができます。
例題1の広義固有空間は、
下のほうに一応定義は示しておきますが、参考程度にどうぞ。
固有値ごとに広義固有ベクトルをまとめたものが広義固有空間だと思ってもらってOKです。
さきほどの例題で広義固有ベクトルを求めるときに
4.ジョルダン標準形の求め方(3次)
3次のジョルダン標準形も2次と同じように計算をすることができます。
ただし、重解のパターンによって解き方が3パターンにわかれるので注意してください。
パターン1 2重解の固有値があり、固有ベクトルが1本足りない場合
例題2
行列
解説2
固有方程式は、
つぎに、広義固有ベクトル(および固有ベクトル)を求めていく。
(1) 固有値が1のとき
固有値1に属する固有ベクトルは、
2重解に対し、固有ベクトルが1本しかないので、
(ii)
固有値が2のときの固有ベクトル
固有値2に属する固有ベクトルは、
よって、
よって、
ジョルダンブロックの構成:
※広義固有空間は
パターン2 3重解の固有値があり、固有ベクトルが2本足りない場合
つぎに固有値が3重解となり、固有ベクトルが1本しか出てこないパターンをみていきましょう。
例題3
行列
解説3
変形がめんどくさいの
固有多項式は、
よって固有値は3(3重解)となる。
(1) 固有値が3のとき
固有値3に属する固有ベクトルは、
広義固有ベクトルが2本足りないので、まずは
しかし、まだ1つ広義固有ベクトルが足りませんね。
なので、今度は、
※解の1つを選ぶ際に
よって、
よって、
ジョルダンブロックの構成:
※広義固有空間は
パターン3 3重解の固有値があり、固有ベクトルが1本足りない場合
例題4
行列
解説4
Step1:固有値を求める
固有値を
固有多項式は、
ここで、
Step2:広義固有ベクトル(広義固有空間)を求める
固有値4に属する固有ベクトルは、
(ただしこの時点では解が出せないので注意)
広義固有ベクトルが1本足りないので先ほどの例題のように固有ベクトルを持ってくるのですが、
なので、定義にしたがって、
例えば、
すると、
よって、
残りの固有ベクトル
なので、
よって、
よって、
ジョルダンブロックの構成:
※広義固有空間は
このように同じ固有値から複数の固有値を求められ、かつ固有ベクトルが重解の数存在しない場合の広義固有ベクトルの求め方は少しめんどくさいです。
5.ジョルダン標準形の求め方のまとめ
ジョルダン標準形がどんなものなのか、そしてどうやって求めるかについてを簡単にですがまとめました。
確認用にご覧ください。
3次正方行列の場合
ただし、対角成分の上の成分は、
3次までのジョルダン標準形を求めるためのステップを簡単にまとめたいと思います。
- 行列の固有値を求める
- 行列の固有ベクトルを求め、重解分だけ固有ベクトルが出るかを確認
- 重解分だけ固有ベクトルが求められなかった固有値に対し、
のように1つ前の固有ベクトル(or 広義固有ベクトル)を用いて広義固有ベクトルを出す - 求めた広義固有ベクトルを並べて正則行列
を作成し、ジョルダン標準形 を作成する。
注意点としては、固有ベクトルが複数本求められたにも関わらず、広義固有ベクトルを用いないとジョルダン標準形が求められない場合は、
6.練習問題
では、ジョルダン標準形を求める練習をしましょう。
練習1→練習2→練習3の順に難易度があがります。
練習1
行列
(1) 行列の固有値を求めなさい。
(2) 固有ベクトル(もしくは固有空間)を求めなさい。
(3) 広義固有ベクトル(もしくは広義固有空間)を求めなさい。
(4) 正則行列
練習2
行列
(1) 行列
(2) 固有ベクトル(もしくは固有空間)を求めなさい。
(3) 広義固有ベクトル(もしくは広義固有空間)を求めなさい。
(4) 正則行列
練習3
行列
(1) 行列
(2) 固有ベクトル(もしくは固有空間)を求めなさい。
(3) 広義固有ベクトル(もしくは広義固有空間)を求めなさい。
(4) 正則行列
7.練習問題の答え
解答1
(1) 固有値を求める
固有値を
(2) 固有ベクトルを求める
固有値が1のときの固有ベクトルは、
固有空間は
(3) 広義固有ベクトルを求める
固有ベクトル
(広義固有ベクトルは
広義固有空間は
(4) ジョルダン標準形を求める
よって、
よって、
解答2
(1) 固有値を求める
行列式では列基本変形も行えるというのを忘れないようにしましょう。
固有値を
ここで、
(2) 固有ベクトルを求める
固有値が4のときの固有ベクトルは、
(2重解なのに固有ベクトルが1本なので、残り1本は広義固有ベクトル
固有値が5のときの固有ベクトルは、
よって固有空間は
(3) 広義固有ベクトルを求める
固有値4に対する広義固有ベクトルが1本不足しているので、
固有値が4のときの固有ベクトルは、
(広義固有ベクトルは
また、広義固有空間は
(4) ジョルダン標準形を求める
よって、
ここで
よって、
解答3
(1) 固有値を求める
行列式では列基本変形も行えるというのを忘れないようにしましょう。
固有値を
ここで、
(2), (3) 固有ベクトル・広義固有ベクトルを求める
固有値2に属する固有ベクトルは、
(ただしこの時点では解が出せないので注意)
なので、定義にしたがって、
ここで、
すると、
よって、
残りの固有ベクトル
なので、
よって固有ベクトルは
また、広義固有ベクトルは
(4) ジョルダン標準形を求める
よって、
ここで
よって、
8.さいごに
今回は、ジョルダン標準形についての簡単な説明と、3次までのジョルダン標準形の求め方を例題などを用いてまとめました。
ジョルダン標準形を求める際には、固有ベクトルを求めていき、足りなくなったら1つ前の固有ベクトル(もしくは広義固有ベクトル)を借りて
また、ドミノ倒し的にもとめていくため、1つ前の固有ベクトル(もしくは広義固有ベクトル)が間違っていくと連鎖的に間違ってしまうため、慎重に計算していきましょう。
次回はジョルダン標準形の応用として行列の
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