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こんにちは、ももやまです。

今までは、

のような変形をすることで解くタイプの微分方程式について説明していきました。

今回は、今までとはちょっと変わった微分方程式の解き方をする完全微分方程式について説明していきましょう。

前回の記事はこちら!↓↓

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1.完全微分方程式

(1) 全微分とは(復習)

2変数関数 z=f(x,y)xy をそれぞれ微小な量 dx, dy 増やしたときに z がどれだけ変化するのかを表した式dz=fxdx+fy(x,y)dyのことを全微分と呼びます。

全微分についてあまりよくわかっていない人は、こちらの記事で復習しましょう↓

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(2) 完全微分方程式とは

1階微分方程式の中で、P(x,y)+Q(x,y)dydx=0dydx=P(x,y)Q(x,y)となるものには様々なものがあります。

この式の両辺に dx を掛けてみましょう。すると、(1)P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0となり、全微分の公式(2)fxdx+fy(x,y)dy=dzにそっくりな形になりますね。

もし、(1)の式の P(x,y), Q(x,y)P(x,y)=fx,   Q(x,y)=fyとなれば、(2)に代入してdz=P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0となりますね。

さらにdz=df(x,y)=0が成立するので、両辺を積分することで微分方程式の解を積分定数 C を用いてf(x,y)=Cと求めることができちゃうのです*1

このように、全微分の公式を用いて解くことができる微分方程式のことを完全微分方程式、もしくは完全形の微分方程式と呼びます。

(3) 完全微分方程式の例

完全微分方程式の仕組みを理解するために、具体的に1つ完全微分方程式の例を1つ作って確認してみましょう。

2変数関数f(x,y)=2x2+2xy+3y2があるとします。すると、偏導関数はfx=4x+2yfy=2x+6yとなりますね。P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0P(x,y), Q(x,y)P(x,y)=fx   Q(x,y)=fyとなれば完全微分方程式となるので、(4x+2y) dx+(2x+6y) dy=0は完全微分方程式となります。

完全微分方程式の一般解は、任意定数 C を用いてf(x,y)=Cと求められるので、一般解は2x2+2xy+3y2=Cと求められます。

(4) 完全微分方程式の解き方

(3)の例では、f(x,y) から完全微分方程式を作り、一般解を求めました。

しかし、実際には f(x,y) は与えられず、与えられた微分方程式P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0完全微分方程式なのかどうかもわからないので、

  1. 完全微分方程式かどうかを判定
  2. 完全微分方程式であれば、P(x,y), Q(x,y) から f(x,y) を求める

ことで一般解を求めることができます。

(i) 完全微分方程式かどうかの判定

(ここから先、P(x,y), Q(x,y) のことを P, Q と略して書くことがあるので注意してください。)

まず、微分方程式P dx+Q dy=0なのかを判定する必要があります。

とはいっても、そんなに判定するのは難しくありません。Py=Qxが一致するどうかを確認すればOKです。(一致すれば完全微分方程式)

本当にこの公式が成り立つかを先ほどの微分方程式(4x+2y) dx+(2x+6y) dy=0で試してみましょう。この場合、P(x,y)=4x+2y,   Q(x,y)=2x+6yとなるので、Py=Qx=2を満たし、確かに完全微分方程式となることがわかりますね。

※ なぜこの公式で判定できるかの証明は今回は省略させてください、すいません…。
(余裕があったら追記したいと思います)

(ii) 一般解の大雑把な求め方

完全微分方程式かどうか判定できたら、あとは実際に P, Q から f(x,y) を求めることで一般解を出すことができます。

今回は大雑把な求め方と厳密な求め方の2つを紹介しましょう。

まずは、大雑把に求める方法について説明します。

ここで、P(x,y)f(x,y)x で偏微分したもの、Q(x,y)f(x,y)y で偏微分したものでしたね。つまり、P=fx,   Q=fyですね。

つまり、f(x,y) を求めるのであれば、

  • P(x,y)x で積分
  • Q(x,y)y で積分

すればいいですね。

しかし、P(x,y)x で積分(もしくは Q(x,y)y で積分)しても完璧な f(x,y) には戻りません

f(x,y)x で偏微分すると y の項が消えてしまいますね。そのため、x で偏微分したものを戻すために x で積分しても、消えた y の項は戻ってきません

同様に Q(x,y)y で積分しても、消えた x の項は戻ってきません

そこで、f(x,y)=P(x,y) dx+g(y)f(x,y)=Q(x,y) dy+h(x)と2つとも計算し、2つの計算結果からそれぞれの足りない項を補うことで f(x,y) 、一般解を求めます。

(ただし、g(y)y だけの関数、h(x)x だけの関数を表します。

実際に先ほど出した微分方程式(4x+2y) dx+(2x+6y) dy=0の一般解を求めてみましょう。この微分方程式の場合、P(x,y)=4x+2y,   Q(x,y)=2x+6yですね。

つぎに、f(x,y) を求めるために P(x,y)x で積分し、Q(x,y)y で積分します。すると、f(x,y)=4x+2y dx+g(y)=2x2+2xy+g(y)f(x,y)=2x+6y dy+h(x)=2xy+3y2+h(x)と2つとも計算し、それぞれの足りない項を補うと、f(x,y)=2x2+2xy+3y2となるので、一般解は任意定数*2 C を用いて2x2+2xy+3y2=Cと表すことができます。

微分方程式P(x,y)+Q(x,y)dydx=0つまり、P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0の微分方程式を解く。

Step1:完全微分方程式かどうかを判別するため、Py=Qxが一致するか確認。(一致しなかったらこの方法では解けない)

Step2:P(x,y)f(x,y)x で偏微分したもの、Q(x,y)f(x,y)y で偏微分したものなので、f(x,y)=P(x,y) dx+g(y)f(x,y)=Q(x,y) dx+h(x)と2つとも計算し、2つの計算結果からそれぞれの足りない項を補い、一般解をf(x,y)=Cとして求めることができる。

完全微分方程式の大雑把な解き方

もう少し厳密に f(x,y) を求める

先ほど f(x,y) は、

  • P(x,y)x で積分した式
  • Q(x,y)y で積分した式

の2つから足りないものを補って求めると説明しましたが、「足りないものを補う」という説明はちょっと直感っぽさが残るので、もう少し厳密に求めてみましょう。

まず、P(x,y)x で積分します。つまり、f(x,y)=P(x,y) dx+g(y)=a(x,y)+g(y)となります。

ただし、a(x,y)P(x,y) を積分したときに出てくる項を集めた関数、g(y)y だけの関数です。

ここで、Q(x,y)f(x,y)(つまり a(x,y)+g(y))を y で偏微分したものでしたね。なので、Q(x,y)=fy=y(a(x,y)+g(y))=ya(x,y)+yg(y)ですね。

ここで、yg(y)=Q(x,y)ya(x,y)なので、y で積分し、g(y)=Q(x,y)ya(x,y) dyを計算することで一般解をa(x,y)+g(y)=Cと求めることができます。P(x,y)Q(x,y) を使ってまとめて書くと一般解は、P(x,y) dx+(Q(x,y)yP(x,y) dx) dyと書くことができます。

先ほどと同じ微分方程式(4x+2y) dx+(2x+6y) dy=0で具体例に試してみましょう。

まず、P(x,y)=4x+2y   Q(x,y)=2x+6yとなりますね。

P(x,y)x で積分すると、f(x,y)=4x+2y dx+g(y)=2x2+2xy+g(y)となります。

g(y)y だけの関数)

ここで、Q(x,y)f(x,y)(つまり a(x,y)+g(y))を y で偏微分したものなので、Q(x,y)=fy=y(2x2+2xy+g(y))=y2x2+2xy+yg(y)=2x+yg(y)ですね。

ここで、yg(y)=Q(x,y)2x=6yなので、y で積分し、g(y)=6y dy=3y2を計算*3することで一般解をf(x,y)=2x2+2xy+g(y)=2x2+2xy+3y2=Cと求めることができます。

微分方程式P(x,y)+Q(x,y)dydx=0つまり、P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0の微分方程式を厳密に解く

Step1:判別式Py=Qxが一致するか確認。(一致しなかったらこの方法では解けない)

Step2:P(x,y)x を偏微分したものなので、f(x,y)=P(x,y) dx+g(y)=a(x,y)+g(y)を計算することで f(x,y) を求める。

(ただし、a(x,y)P を積分して得られる x が入った項、g(y) は積分で得られない y だけの項を表す)

Step3:g(y) を求めるために f(x,y)、つまりa(x,y)+g(y)y で微分する。すると、Q(x,y)=ya(x,y)+yg(y)が成立し、変形し、yg(y)=Q(x,y)ya(x,y)とする。

Q(x,y)f(x,y)y で微分したものに等しいので)

Step4:g(y)を積分(任意定数は考えなくてOK)することで、一般解を任意定数 C を用いてf(x,y)=a(x,y)+g(x,y)=Cと求めることができる。

※ Step2以降では、P(x,y) の代わりに Q(x,y) を積分して h(x) を求める方法でも f(x,y) や一般解を求めることができます。

なお、下に乗せた例題では Q(x,y)h(x) から f(x,y) や一般解を求めています。

少し厳密な完全微分方程式の解き方

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2.積分因子

(1) 積分因子とは

先ほど、完全微分方程式P(x,y) dx+Q(x,y) dy=0の解き方を説明しました。

しかし、完全微分方程式の解き方が使える微分方程式、つまりPy=Qxが成立する微分方程式はそう多くはありません。

そこで、完全微分方程式ではない微分方程式の両辺に μ(x,y) を掛け、μ(x,y)P(x,y) dx+μ(x,y)Q(x,y) dy=0の形にします。

μ(x,y) を掛けた微分方程式が完全微分方程式となるときの μ(x,y)積分因子と呼びます。

積分因子

完全微分方程式ではない微分方程式P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0の両辺に μ(x,y) を掛けることで完全微分方程式になるとき、μ(x,y) を積分因子と呼ぶ。

(2) 積分因子を探すのは大変

μ(x,y)(以下 μ)を掛けた微分方程式が完全微分方程式となる条件は、(μP)y=(μQ)xなので積の微分公式を使って分配すると、μyP+μPy=μxQ+μQxですね*4

しかし、上の式が成り立つような μ を見つけるのはかなり難しいです。

(3) 積分因子の条件を制限すると…

そこで、μ を少し制限して、x だけの関数 μ(x)y だけの関数 μ(y) だとどう求めることができるのかを計算しましょう。

(i) 積分因子が x だけの関数のとき

積分因子を x だけの関数、つまり μ(x) とします。

すると、μ(x)y で微分したもの μy は0になりますよね。つまり、μyP+μPy=μxQ+μQxμyP の項が消え、μPy=μxQ+μQxとなります。両辺を Q で割り、さらに変形すると、dμdx=μPyQxQとなります。

もし、PyQxQ=g(x)x だけの関数(g(x) とする)であれば*5、変数分離系1μ dμ=g(x) dxとなるので、両辺を x で積分し、log|μ|=g(x) dxとなるので、積分因子をμ=eg(x) dxと導くことができます。

(積分因子は、もとの微分方程式の両辺に掛けるものなので、任意定数 C を付ける必要はありません。)

(ii) 積分因子が y だけの関数のとき

積分因子を y だけの関数、つまり μ(y) とします。

すると、μ(y)x で微分したもの μx は0になりますよね。つまり、μyP+μPy=μxQ+μQxμxQ の項が消え、μyP+μPy=μQxとなります。両辺を P で割り、さらに変形すると、dμdx=μQxPyPとなります。

もし、QxPyP=h(y)y だけの関数(h(y) とする)であれば*6、変数分離系1μ dμ=h(y) dyとなるので、両辺を y で積分し、log|μ|=h(y) dyとなるので、積分因子をμ=eh(y) dyと導くことができます。

(積分因子は、もとの微分方程式の両辺に掛けるものなので、任意定数 C を付ける必要はありません。)

(1) もし x だけの関数 g(x) を用いてPyQxQ=g(x)が成立するとき、積分因子は x だけの関数で表せ、その積分因子 μ(x)μ(x)=eg(x) dxと計算できる。

(2) もし y だけの関数 h(y) を用いてQxPyP=h(y)が成立するとき、積分因子は y だけの関数で表せ、その積分因子 μ(y)μ(y)=eh(y) dyと計算できる。

(※ 積分因子に任意定数 C は不要)

積分因子がx (もしくはy) だけの関数のときの求め方

(4) 例題を解いてみよう

では、実際に積分因子を用いて完全微分方程式にしてから解くタイプの問題の例題を解いてみましょう。

例題1

微分方程式(y+xy) dx+x dy=0について (1), (2) の問いに答えなさい。

(1) この微分方程式は完全形ではない。完全形にするために必要な積分因子を答えなさい。
(2) (1)で答えた用いた積分因子を用いて、微分方程式の一般解を求めなさい。

解説1

(1)

P(x,y)=y+xy,   Q(x,y)=xとする(以下 P, Q と書くことがある)。ここで、dPdy=1+x,   dQdx=1なので確かに完全形ではない。

ここで、積分因子を μ(x,y)(以下 μ とする)とすると、μ(x,y)(y+xy) dx+μ(x,y)x dy=0となるので完全形となる条件は、(μP)y=(μQ)xつまり、μyP+μPy=μxQ+μQxを満たすことである。

ここで、積分因子が x, もしくは y だけの関数で表せないか考える

積分因子が x だけの関数 μ(x) で表せると仮定すると、μy=0 となるので、μPy=μxQ+μQxの関係式が成り立つ。両辺を μQ で割り、さらに変形すると、1μdμdx=PyQxQ=g(x)となる。ここで、PyQxQ=1+x1x=1=g(x)となるので、積分因子 μ(x,y)x だけの関数 μ(x) となる。

つまり1μ dμ=1 dxとなるので、log|μ|=xμ=exとなるので積分因子 μ(x)ex となる。

[積分因子特定のコツ]

積分因子を x だけの関数、y だけの関数どっちに仮定すればいいか迷いますよね。

慣れないうちは、2つの判定式PyQxQ=g(x),   1(1+x)y+xy=h(y)の両方を確認しましょう。確認すると、1+x1x=1=g(x)1(1+x)y+xyh(y)となるので、x だけと仮定したらうまくいくことがわかりますね。

また、x, y どっちかを考えるコツとして、分母側(つまり P, Q の値)を見る方法があります。

P のほうが単純であれば y だけの関数に、Q のほうが単純であれば x だけの関数と仮定するとうまくいくことが多いです。両方とも単純じゃなさそうなら地道に両方計算しましょう。

(分母が単純な関数であればあるほど x だけの関数、y だけの関数にしやすいですよね。今回の場合、P=y+xy に比べると、Q=x のほうが単純なので、判定式の分母が Q となる x だけの関数と仮定すると… うまくいくのです!)

(2)

両辺に積分因子 ex を掛けると、微分方程式はex(y+xy) dx+xex dy=0となる。

ここで、改めてP(x,y)=ex(y+xy),   Q(x,y)=xexとすると、dPdy=dQdx=ex(1+x)となり、完全形(完全微分方程式)となっている。

微分方程式の一般解を任意定数 C を用いてf(x,y)=Cとすると、f(x,y) は、Q(x,y)y で積分したものになるので、x だけの関数 h(x) を用いてf(x,y)=xex dy+h(x)=yxex+h(x)と表せる。

(もちろん P(x,y)x で積分したものなので、f(x,y)=(y+xy)ex dx+g(y)=(y+xy)exyex+g(y)=xyex+g(y)とし、g(y) を求める方法で求めることができます。

ex(y+xy)x で積分するよりも xexy で積分するほうが難易度が低めなので、今回は xexy で積分するパターンで解いています。)

ここで、h(x) を求めるために f(x,y)、つまり yxex+h(x)x で偏微分する。

P(x,y) は、f(x,y)x で偏微分したものなので、P(x,y)=fx=x(yxex+h(x))=xyxex+xh(x)=yex+yxex+xh(x)=ex(y+xy)+xh(x)ですね。

ここで、xh(x)=P(x,y)ex(y+xy)=0なので、x で積分し、h(x)=0を計算することで一般解をf(x,y)=yxex+h(x)=yxex=Cと求めることができます。

(任意定数は f(x,y) でつけるので、h(x) の積分では省略しています。)

[2パターン積分し、足りないものを補うパターン]

f(x,y) を求めるために P(x,y)x で積分し、Q(x,y)y で積分すると、f(x,y)=(y+xy)ex dx+g(y)=xyex+g(y)f(x,y)=xex dy+h(x)=xyex+h(x)と2つとも計算し、それぞれの足りない項(今回はありませんが)を補うと、f(x,y)=xyexとなるので、一般解は任意定数 C を用いてxyex=Cと表すことができます。

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3.練習問題

では、完全微分方程式や積分因子に関する問題について、3問ほど練習してみましょう。

練習1

微分方程式3x2+4xy+4y2+(2x2+8xy+9y2)dydx=0の一般解を求めなさい。

練習2

微分方程式y dx+x(logx+y) dy=0について、(1), (2)の問いに答えなさい。ただし、x>0 である。

(1) この微分方程式は完全微分形ではない。積分因子を x だけの関数と仮定し、完全微分形にするための積分因子を求めなさい。
(2) (1)で求めた積分因子を用いて、微分方程式を解きなさい。

練習3

微分方程式(y2x2)dydx+2xy=0の一般解を求めなさい。

4.練習問題の答え

解答1

両辺に dx を掛けると、(3x2+4xy+4y2) dx+(2x2+8xy+9y2) dy=0となる。

まずは、完全微分方程式かを調べるためにP(x,y)=3x2+4xy+4y2,   Q(x,y)=2x2+8xy+9y2とし、dPdy=dQdxになるかどうかを調べる。dPdy=dQdx=4x+8yとなるので、与えられた微分方程式は完全微分方程式であることがわかる。

[大雑把に解く]

ここで、f(x,y) を求めるために P(x,y)x で積分し、Q(x,y)y で積分すると、f(x,y)=3x2+4xy+4y2 dx+g(y)=x3+2x2y+4xy2+g(y) f(x,y)=2x2+8xy+9y2 dy+h(x)=2x2y+4xy2+3y3+h(x)と2つとも計算し、それぞれの足りない項(今回はありませんが)を補うと、f(x,y)=x3+2x2y+4xy2+3y3となるので、一般解は任意定数 C を用いてx3+2x2y+4xy2+3y3=Cと表すことができます。

[厳密に解く]

P(x,y)x で積分すると、f(x,y)=3x2+4xy+4y2 dx+g(y)=x3+2x2y+4xy2+g(y)となる。

g(y)y だけの関数、積分定数は省略)

ここで、Q(x,y)f(x,y)(つまり a(x,y)+g(y))を y で偏微分したものなので、Q(x,y)=fy=y(x3+2x2y+4xy2+g(y))=y(x3+2x2y+4xy2)+yg(y)=2x2+8xy+yg(y)が成立する。

さらに、yg(y)=Q(x,y)2x2+8xy=9y2なので、y で積分し、g(y)=9y2 dy=3y3を得ることができる。

(任意定数は f(x,y) でつけるので、ここでは不要)

よって一般解は任意定数 C を用いてf(x,y)=x3+2x2y+4xy2+g(y)=x3+2x2y+4xy2+3y3=Cと求めることができます。

解答2

(1)

P(x,y)=y,   Q(x,y)=x(logx+y)とする。ここで、dPdy=1 dQdx=(logx+y)+x1x=logx+y+1となり、dPdydQdxなので確かに完全形ではない。

積分因子を x だけの関数  μ(x)(以下 μ とする)と仮定すると、μy=0 となるので、μPy=μxQ+μQxの関係式が成り立つ。両辺を μQ で割り、さらに変形すると、1μdμdx=PyQxQ=g(x)となる。ここで、PyQxQ=1(logx+y+1)x(logx+y)=(logx+y)x(logx+y)=1x=g(x)となるので、確かに積分因子 μ(x,y)x だけの関数 μ(x) となることがわかる。

また、1μ dμ=1x dxとなるので、log|μ|=logxμ=1xとなるので積分因子 μ(x)1x となる。

(今回は x>0 なので、log|x| の絶対値を取って logx としています。)

(2)

両辺に積分因子 1/x を掛けると、微分方程式はyx dx+(logx+y) dy=0となる。

ここで、改めてP(x,y)=yx,   Q(x,y)=logx+yとすると、dPdy=dQdx=1xとなり、完全形(完全微分方程式)となっている。

(これで(1)が正しいことの検算になる。)

[大雑把に解く]

ここで、f(x,y) を求めるために P(x,y)x で積分し、Q(x,y)y で積分すると、f(x,y)=yx dx+g(y)=ylogx+g(y) f(x,y)=logx+y dy+h(x)=ylogx+12y2+h(x)と2つとも計算し、それぞれの足りない項を補うと、f(x,y)=ylogx+12y2となるので、一般解は任意定数 C を用いてylogx+12y2=Cと表すことができます。

[厳密に解く]

P(x,y)x で積分すると、f(x,y)=yx dx+g(y)=ylogx+g(y)となる。

g(y)y だけの関数)

ここで、Q(x,y)f(x,y)(つまり a(x,y)+g(y))を y で偏微分したものなので、Q(x,y)=fy=y(ylogx+g(y))=yylogx+yg(y)=logx+yg(y)が成立する。

さらに、yg(y)=Q(x,y)logx=yなので、y で積分し、g(y)=y dy=12y2を得ることができる。

(任意定数は f(x,y) でつけるので、ここでは不要)

よって一般解は任意定数 C を用いてf(x,y)=ylogx+g(y)=ylogx+12y2=Cと求めることができます。

解答3

両辺に dx を掛けると、(y2x2) dy+2xy dx=02xy dx+(y2x2) dy=0となる。

ここで、微分方程式が完全形かどうかを調べるためにP(x,y)=2xy,   Q(x,y)=y2x2とする。ここで、dPdy=2x dQdx=2xとなり、dPdydQdxなので完全形ではない。

ここで、積分因子が x, もしくは y だけの関数で表せないか考える*7

P=2xyQ=y2x2 では Q のほうが単純なので、y と仮定すればうまくいきそうだな、と脳内で思いましょう。)

積分因子が y だけの関数 μ(y) で表せると仮定すると、μx=0 となるので、μyP+μPy=μQxの関係式が成り立つ。両辺を μP で割り、さらに変形すると、1μdμdx=QxPyP=h(y)となる。ここで、QxPyP=2x2x2xy=2y=h(y)となるので、積分因子 μ(x,y)y だけの関数 μ(y) となる。

つまり1μ dμ=2y dyとなるので、log|μ|=2log|y|μ=1y2となるので積分因子 μ(y)y2 となる。

両辺に積分因子 y2 を掛けると、微分方程式は2xy1 dx+(1x2y2) dy=0となる。

ここで、改めてP(x,y)=2xy1,   Q(x,y)=1x2y2とすると、dPdy=dQdx=2xy2となり、完全形(完全微分方程式)となっている。

(これで積分因子が正しいことの検算になる。)

[大雑把に解く]

ここで、f(x,y) を求めるために P(x,y)x で積分し、Q(x,y)y で積分すると、f(x,y)=2xy1 dx+g(y)=x2y1+g(y) f(x,y)=1x2y2 dy+h(x)=y+x2y1+h(x)と2つとも計算し、それぞれの足りない項を補うと、f(x,y)=x2y1+y=x2y+yとなるので、一般解は任意定数 C を用いてx2y+y=Cと表すことができます。

[厳密に解く]

P(x,y)x で積分すると、f(x,y)=2xy1 dx+g(y)=x2y1+g(y)となる。

g(y)y だけの関数)

ここで、Q(x,y)f(x,y)(つまり a(x,y)+g(y))を y で偏微分したものなので、Q(x,y)=fy=y(x2y1+g(y))=yx2y1+yg(y)=x2y2+yg(y)が成立する。

さらに、yg(y)=Q(x,y)(x2y2)=1なので、y で積分し、g(y)=1 dy=yを得ることができる。

(任意定数は f(x,y) でつけるので、ここでは不要)

よって一般解は任意定数 C を用いてf(x,y)=x2y1+g(y)=x2y+y=Cと求めることができます。

5.さいごに

今回は、

  • 1階微分方程式を完全微分方程式として解く方法
  • 完全微分方程式ではない微分方程式を積分因子を用いて完全微分方程式にしてから解く方法

の2つを紹介しました。

今回で「1階微分方程式」に関する記事は終了です!

次回からは「2階線形微分方程式」についての記事を書いていきたいと思います。

*1:たまに「0を積分したら0だろ!」と思う人もいるのですが、微分して0になる数は0以外にもたくさんありますよね…?(定数であればどんな定数でも微分したら0になります)

*2:定数は、P(x,y)x で積分したとき、Q(x,y)y で積分した2つの式を両方使っても補えないので、最後に任意定数をつけることで補う。

*3:ただし、任意定数は最後の一般解でつけるのでここでは省略する。

*4: μy などについている添字の y は、y で偏微分することを示しています。同様に μx の添字 xx で偏微分することを示しています。

*5:もしPyQxQx だけの関数でなければ、積分因子が x だけの関数ではないことがわかるのでこの方法では解けない。

*6:もしQxPyPy だけの関数でなければ、積分因子が y だけの関数ではないことがわかるのでこの方法では解けない。

*7:
慣れないうちは、PyQxQ=g(x),   QxPyP=h(y)の両方を確認しましょう。今回の問題の場合、確認すると2x+2xy2x2g(x)2x2x2xy=2y=h(y)となるので、y だけと仮定したらうまくいくことがわかりますね。

もし、両方のパターンで失敗した場合は計算ミスしているか積分因子で解くのが難しい問題なのでダメそうならあきらめましょう。

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